和歌山県太地町のイルカ漁を告発した映画『ザ・コーヴ』は反日なのか?
捕鯨はナショナリズムのアイコン
イルカ漁を含む日本の捕鯨についての問題を言葉で要約すれば、拙速と強引に尽きる。日本の南極海における調査捕鯨の実質は商業捕鯨であると国際司法裁判所は判決を下し、日本は2019年に国際捕鯨委員会を脱退して商業捕鯨に舵を切った。 でも鯨肉の需要は圧倒的に減少している。1960年代は年間20万トン前後を推移していたが現在は1000~2000トン程度。国際的に批判されながら日本が捕鯨にこだわり続ける理由は、捕鯨がナショナリズムのアイコンになってしまったからだ。 最後に書くが、この映画は日本の捕鯨やイルカ漁を批判しているが、日本人を批判はしていない。ラストカットがそれを示している。 『ザ・コーヴ』(2009年) 監督/ルイ・シホヨス 出演/ルイ・シホヨス、リック・オバリー <本誌2024年12月24日号掲載>
森達也(作家、映画監督)