志村けんさん「ヒゲダンス」秘話 ドリフと音楽の幸せな関係
「東村山音頭」とブラックミュージック
「『ヒゲダンス』や『ドリフの早口ことば』は、ファンクおよびソウル・R&Bのテイストも含む広義としてのブラックミュージックを志村さんらドリフターズが上手く取り入れて、結果的に『8時だョ!全員集合』というヒット番組を通じて広くお茶の間に伝播していったと推察できます」と指摘するのは、音楽プロデューサーの油布賢一さん。 「ヒゲダンス」が流行った1979~80年当時、油布さんはまだ小学生で洋楽からのサンプリングも知らず、ただただコミカルなダンスとパフォーマンスに大爆笑していたという。しかし音楽プロデューサーとなったいま振り返ると、志村さんやドリフと音楽の関係性の濃さにあらためて気付かされると話す。 「ファンクテイストのブラックミュージックの定義はリズムとビートに重点を置いたダンスとの親和性が高い音楽。シンプルなコード進行とフレーズ(リフ)の繰り返しの中で、シャッフルしている楽器もあればストレートに弾く楽器もありと、独特なレイド感ある16ビートなグルーブはなかなか日本人には真似できません」(油布さん) ただ、志村さんの大ブレークにつながった「東村山音頭」など日本古来の盆踊り等に共通する箇所もあるという。 「拍頭(小節の始めの音)を強調したサウンドです。それを上手く昇華させ、16ビートではない8ビート寄りの日本人が真似できるダンスにまとめたのがお茶の間に流行した原因の一つかと思います。今でこそヒップホップ含めブラックミュージックはJ-POPシーンに浸透していますが、当時のメロディ重視の日本歌謡シーンとは一線を画すブラックミュージックを、媒体効果が強烈なヒット番組で披露したことで、バラエティー、コメディーを超越し新たな音楽性を提供した功績は非常に高いと思います」(油布さん) 多少大げさな言い方をすれば、もしドリフや『全員集合』、そして志村さんがいなければいまのファンク、R&B、ソウル、ヒップホップを基調としたJ-POPシーンは少し遅れていた可能性があるかもしれない。 (文:志和浩司)