呂布カルマはなぜ麻生太郎を目指すのか「リアルな言葉は、抜き身すぎるがゆえに強度は比べるまでもない」
ラッパーとしてはもとより、グラビアディガー、テレビのコメンテーターなど、多岐にわたって異彩を放っている呂布(りょふ)カルマ。『週刊プレイボーイ』の連載コラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」では「人生のロールモデル」について語った。 * * * ★今週のひと言「人生のロールモデルの3人。いつか麻生太郎になりたい」 俺にはロールモデルとなるような先人が何人かいる。 同業者のラッパーたちは海外のラッパーに憧れ、ライフスタイルごとコピーしようとするが、たいていの場合それはかなり無理がある。俺の場合は少し違う。 いち音楽家としてなら、おこがましいのは承知で井上陽水だ。 とがった音楽性のまま教科書にも載るような名曲も残しつつ、記名性の高い声質、一見して怪人然とした風貌だが、帽子をかぶってサングラスを外してしまえば一般人に交ざることもできそうだ。 あと、意外にも身長が180㎝近くあるのもポイントが高い。単純にデカいと舐められない。 次に、音楽家+テレビタレントとしてなら、これまたおこがましいのは承知で、やしきたかじんだ。 もともと関西出身の俺は、幼少期にテレビでたかじんを毎日のように見ていたが、名古屋に引っ越してから、たかじんが全国に名を通しつつも関西ローカルであることを知った。 歌手でありながらお笑い芸人顔負けの話術でMCもこなし、大阪の夜の街に根差し、不良性もたたえたその姿勢は、地元名古屋に暮らしたままラッパーとしてテレビに出ていく俺の理想の形だ。あわよくば、その名前を襲名せんとばかりに『ヤングたかじん』という曲も書いた。 そして最後が、麻生太郎だ。何、名前に麻が生えるからとかそんな理由ではない。 そしてぶっちゃけ麻生さんの政治理念や実績も大して知らなければ、興味もない。俺が指針としているのはその態度だ。 いつもふてくされているような表情をしているかと思えば、人懐っこい少年のような笑顔を見せたりもする。政治家とは思えないほどの乱暴な物言いは、たびたび舌禍を招き、不適切発言、問題発言を繰り返している。 しかし、その頻度ゆえか「また麻生がむちゃくちゃ言ってるわ」ぐらいの感じで許されてるのか諦められてるのか、退任に追い込まれるような致命傷を負うには至らず、コロコロとトップがすげ替わる日本の政治において最大与党である自民党の副総裁を務め続けている。 実力とバランス感覚に秀でており、変にへり下りもせずしっかりと偉そうにしていてくれるのだ。 俺は偉い人にはちゃんと偉そうにしておいてほしいタイプだ。 まぁ、選挙で選ばれた公僕であり、国民の税金から議員報酬を得ている国会議員が果たして偉いのかというと微妙なとこではあるが、とにかく麻生太郎は偉そうで、それが堂に入(い)っているのだ。 絶妙なバランス感覚から放たれる、暴言スレスレのリアルな言葉。 それは、各方面に配慮と忖度(そんたく)が行き渡り、揚げ足を取られまいと予防に予防を重ねた挙句、形式ばって肝心の中身が伝わらないその他議員とは違い、あまりにも抜き身すぎるがゆえに、過敏な連中がその都度燃やしにかかるのだが、メッセージとしての強度は比べるまでもない。 麻生太郎が大勢の記者に囲まれながら面倒くさそうにゆがんだ口を開くとき、またよけいなことを言うのではないかというワクワクが常にある。 俺もおかげさまで、自ら招いた舌禍でボヤ程度ではあるが、SNSなどで火がおこり、たびたび暖を取らせてもらっている。 この調子で世の中が「また呂布がめちゃくちゃ言ってるわ」という境地に達するのを目標に、心の中の麻生太郎を育んでいくつもりだ。 撮影/田中智久