【デブリ採取開始】知見積み廃炉着実に(9月11日)
東京電力は軽微なミスも大きなトラブルにつながる恐れがあると改めて認識し、いかなる作業にも細心の注意を払わなくてはならない。長期に及ぶ溶融核燃料(デブリ)取り出しは廃炉の工程で最難関の作業とされ、予期せぬ問題が起きる可能性がある。先々を見越した準備と詳細な計画、議論の重要性は増してくる。 東電は10日、準備段階での初歩的ミスによって延期していた福島第1原発2号機からのデブリ採取に着手した。パイプの並び順を間違えた反省を踏まえ、確認作業を徹底させた。高線量下では単純な作業も予想以上に難易度が高まるとの教訓も得たとしている。手順をしっかり点検するなど慎重な対応が欠かせない。 取り出し開始を受け、廃炉は工程表「中長期ロードマップ」の最終段階となる第3期に入った。廃炉への正念場を迎えたとも言える。知見を積み上げ、着実な作業につなげてほしい。 工程表では、第3期を2051年までに終えるとしている一方で、そこに至る具体的な過程には触れていない。東電が現時点で描くシナリオは、2030年代に3号機でデブリの本格的な取り出しを始めるとの内容にとどまる。
放射線量が非常に高いデブリの取り出しに向けた工法選択をはじめ、保管や処分などの取り組みは前例がない。未知の作業に着手するには、デブリの性状や原子炉内部の状況把握が大前提となる。東電と国は安全を確保しつつ、廃炉を進展させるために、2号機のデブリの試験的な採取をまずは確実に進め、蓄積した科学的データに裏付けられた詳細な工程を早期に提示する必要がある。 デブリの処分は、廃炉を遂げるまでに解決すべき大きな課題となる。初回の採取はわずか数グラムだが、最終的には1~3号機から計880トンを運び出す。当面は敷地内に保管する計画だが、その後の対応は未定だ。 県は、県外搬出を強く求めているが「受け入れ先が見つからず、置き去りになるのではないか」と不安視する声も関係者の一部に聞かれる。国は結論を先送りすることなく、法制化も視野に入れ、早い段階から丁寧に議論を進めるべきだ。(角田守良)