本田圭佑「1万円払ってサッカー教えます」のツイート波紋と背景とは?
契約満了に伴ってACミランを退団した後の2017年7月。大方の予想を裏切ってメキシコの強豪パチューカへ新天地を求めたときも、背番号は「02番」を選んでいる。パチューカには一桁の番号の十の位に「0」をつける伝統があり、二重の意味で攻撃系の選手では異例となる番号でプレーした。 リーグ戦で7ゴール5アシストの成績を残した、メルボルン・ビクトリーからの退団を表明している本田はすでに帰国。都内で行われたイベントで仮想通貨ビジネスへの関心を熱く語るなど、以前からもちあわせているビジネスマンの顔ものぞかせながら、精力的にオフをすごしている。 今回のツイートも出版社の編集者や起業家と会食した席で、環境や貧富の差などに影響されることなく、いい教育を受けられるチャンスがある世の中にしたいと熱弁。教える側がお金を払ってもいいのでは、という起業家の考えに共感し、編集者に続いてその場でツイートしたことが5月31日の情報番組で明かされている。 一方で現役プレイヤーとしての本田は、最大の目標を来夏の東京五輪でオーバーエイジの一人として出場し金メダルを獲得することに設定。自らをさらに高めることのできる、ヨーロッパの主要リーグを新天地として望んでいるとされるが、具体的な動きは現時点ではない。 東京五輪の開幕時で34歳。当然ながら「普通は厳しい――」といった類の意見が数多く出るだろう。そのたびに常識を覆してやろう、と本田の魂がかき立てられる図式が生まれる。そして、本田が語っていた移籍先を選ぶ上での最優先事項は、いまも変わっていないはずだ。 「試合に出ることを優先して移籍したことが、過去にないんですね。自分が成長できる、あるいは自分が面白いと感じられる刺激的なチームへ、常に挑戦心を抱いて行っている。面白いから行ってみたい、と思えるクラブがあるかどうかがものすごく重要なので」 お金を払ってサッカーを教えます、という仰天ものの呼びかけも含めて、既成概念にとらわれない言動は賞賛されると同時に、ビッグマウスにも聞こえるがゆえに批判の対象にもなってきた。それでも、聞く側を刺激する言葉を放ち続ける理由を、本田はこう説明したことがある。 「自分のことが弱い人間だとわかっているから、周囲に対してあえて言うことで、逃げ道をなくしてきたんですね」 自分を取り巻くすべての状況を楽しむかのように、本田はぶれることなく前進を続けていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)