父から相続税対策で「毎年100万円」の贈与を受けています。正月の帰省時に初期の「認知症」のように感じたのですが、今後注意すべきことはあるでしょうか…?
被相続人となる予定の人(親)が認知症と診断されると、相続税対策や実際の相続をするにあたってトラブルのもととなりかねません。早めに準備をしておくことで、スムーズな相続ができるようになります。 本記事では、被相続人(親)が認知症などで判断能力に問題が出てくる前に、相続に関して先んじて行っておくべきこと、問題が生じた後にやるべきことについて解説します。 ▼子ども名義の口座に「月3万円」ずつ入金してるけど、将来口座を渡すときに「贈与税」はかかるの? 非課税にすることは可能?
親が認知症になった場合、相続について想定されるトラブルとは
被相続人(親)が認知症と診断された場合、最も大きな問題は「判断能力を失った人」とみなされることにより、遺言書の作成などの「法律行為」ができなくなることです。また、今回のケースでは親から子に贈与を毎年行っていますが、贈与を行ったタイミングで、親に判断能力があったかどうかを問われる可能性もあります。 例えば、毎年の贈与が長男だけに行われており、次男が不満に思っている場合などは、相続発生時にトラブルになる可能性が高まります(次男が「長男が贈与を受けた時点・遺言を作成した時点で、親は判断能力を失っており、贈与行為・遺言は無効である」と訴えるなど)。 事前の遺言書作成は、相続時に起きやすいトラブルを未然に防ぐために大変有効ですので、被相続人の判断能力が認められるうちに行っておくことが重要です。 また、相続税対策のために毎年親が子に贈与を行っている場合は、特に親の認知能力について注意し、認知能力がある期間になるべく多く、計画的に贈与をしていきましょう。 特に節税に関しては、令和6年1月1日より施行された相続税及び贈与税の税制改正の影響もあり、場合によっては、「相続時精算課税制度」を選択したほうが有利になる場合もあります。今回の税制改正による大きな変更点は以下2点です。 ・相続税の課税対象が「相続開始前の3年間」に行われた贈与から「相続開始前の7年間」に行われた贈与に段階的に変更 ・「相続時精算課税制度」を選択した場合、令和6年1月1日以後に贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、暦年課税の基礎控除とは別に、贈与税の課税価格から基礎控除110万円が控除されるようになる 相続時精算課税制度の毎年の110万円控除は今までなかったものですので、毎年定期的に親から子などへ贈与を行っている家庭の場合、以前よりも有利になります。一方、暦年課税の基礎控除は実質的に縮小する方向です。 それぞれのご家庭の状況によって選ぶべき制度は異なりますので、ファイナンシャル・プランナーや税理士などに相談するとよいでしょう。