「今の女性誌は“男性ウケ”より“自分の生活の充実”がメインになってきていますよね」漫画家・谷口菜津子が最新作でようやく描けた「勉強だけじゃどうにもならないこと」
2022年に手塚治虫文化賞新生賞を受賞した漫画家・谷口菜津子の新連載『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は、”完璧な男”が慣れないながらに作る料理を通して、今までの「あたりまえ」を見つめなおす物語だ。インタビュー後編では、女性にとっての幸せの変化や誰かと暮らすために大切なこと、自身の結婚生活について聞いた。 【漫画】『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第2話を読む
今は「結婚しないの?」みたいな質問自体がタブー
––––女性の自立が叫ばれるようになって久しいですが、親は専業主婦だったという人たちもそれなりにいて、「これまで」と「これから」の変化の中で混乱する人も多そうです。『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の主人公・海老原勝男の彼女、鮎美もその1人だと思うのですが。 勝男と鮎美は「これまで」の形式での「幸せになるためのモデルケース」を意識し過ぎて、“本当の自分”を忘れてしまった2人です。今まではうまくいっていたのに「これって違うかも」と先に気がついた鮎美が、勝男から離れてしまう。 たとえば私が10代のころに読んでいた女性誌は、着回しコーデのストーリーが「気になる男の子に告白するまでの30DAYS」みたいに「モテ」がすごくフィーチャーされていたような気がします。鮎美は、そういう「モテのテクニック」にマーカーを引くぐらい、真面目に“勉強”していた女の子です。 でも、今の女性誌は「男性ウケ」よりも「自分の生活の充実」がメインになってきているような印象です。女性誌って、本当に世相を表していますよね。 ––––「男性からモテる→お嫁にもらってもらう」ことが幸せだと思われていた時代から、だいぶ変わりましたね。 今って「結婚しないの?」みたいな質問自体が、タブーな雰囲気がありますよね。逆に私は20代のとき「結婚しなさそう」と何度か言われて、それはそれで何か足りないものがあるのかとムカついたりもしていました。 でも、結婚に対しては恐怖もありました。幼少期からあまり仲の良い夫婦関係をあまり見てこなかったのと、当時のドラマやバラエティでも「いつも怒っている嫁と、家に帰りたくない夫」みたいな構図を観てきたから、「今仲良くやっている恋人同士でも、自分も結婚をすることでこういった夫婦になってしまうのでは!?」と怯えていました。 ––––「結婚=幸せ」という共通認識があるはずなのに、目にする夫婦生活は幸せそうじゃない、みたいな? そうそう。なので、「不仲夫婦にならないようにするには、どうすればいいんだろう?」と考えて、私自身は別居婚を選びました。
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