日本に住み続けるのはリスクがある? 経済的不安、年金、医療…増える海外永住者、その背景は? メリット・デメリットなど専門家が解説
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。1月24日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「増える海外永住者 その背景は?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
◆増える日本人の海外永住者
日本人の海外永住が増え続けています。生活拠点を海外に移した永住者の数は、2023年10月1日時点で57万4,727人。ここ20年ほど増え続けているということです。 吉田:塚越さん、まずは海外に永住する日本人の増加傾向が続いている状況について、教えてください。 塚越:まずデータから説明します。外務省が2023年10月に発表した「海外在留邦人数調査統計」によると、海外に住んでいる日本人全体は、2019年と比較して減っています。 例えば、海外に3ヵ月以上滞在して、いずれ日本に戻るつもりの「長期滞在者」は、2019年は約90万人。それからコロナがあって減り続け、2023年10月の段階では約72万人となっています。 今回注目されているのは、滞在国の永住権を取得するといった「永住者」。この人たちは増加傾向にあります。2019年に約52万人だったのが、2023年10月は57万4,000人と、前年比3%の増加。過去最高とのことです。 つまり、留学を含むような長期滞在者は減っているのですが、永住者は増えているということです。永住者が移り住む先として多い地域は北米で48.7%。次が西欧で16.9%と、欧米が多いです。
◆移住者の9割は「長期的な経済的不安」が理由
吉田:日本を出て海外に永住する人は、いつ頃から増え始めましたか? 塚越:永住者が特に増えたのは2000年頃からとのことです。日本国内は経済的に低迷していたり、あるいは日系企業の海外進出が進んでいたり、若い人は国内で正規雇用になりづらくなったりしたので、少しずつ人々が海外に出ていくようになりました。 また、永住はすぐにできるものではなく、現地で職を探すなど数年以上はかかるので、この現象はそれなりに長いスパンで起きているということです。 ユージ:日本を出て海外に永住する人が増え続けている背景は何でしょうか? 塚越:日経新聞の記事で紹介されています、メルボルン大学の大石奈々准教授がコロナ前に実施した移住者へのインタビューでは、9割以上が長期的な経済的不安を理由に挙げていたということです。医療制度や年金制度のことを考えると、日本に住み続けるのはリスクがあるので海外へ、という理由が多いということです。 また永住者の62%が女性ということで、女性が多いのも特徴です。海外で国際結婚する日本人は7割が女性。海外のほうが、女性であることの制約が少ない(ジェンダー平等が進んでいる)ので、キャリア形成のために移住する独身女性も多いようです。 また、(全体の数としては少ないものの)我が子を、将来的にどこの国でも働けるようなグローバル人材にすべく、海外で教育するために移住する「子育て世代」も少しずつ増えているということです。 要するに、日本よりも北米や西欧のほうが、賃金や労働環境、社会の多様性といった面で日本より魅力的と感じる人が増えています。