槙野も指摘。横浜F・マリノス対浦和レッズ“誤審騒動”の問題点はどこにあるのか?
前代未聞の光景が日産スタジアムのピッチ上で繰り広げられた。一度認められたゴールがオフサイドとして取り消され、さらに判定が覆されて最終的にはゴールとなる。試合中断は約9分間に及び、その間、横浜F・マリノスと浦和レッズの選手および首脳陣が審判団へ何度も詰め寄った。 13日に行われた明治安田生命J1リーグ第19節。マリノスの1点リードで迎えた後半14分に、問題の場面は訪れた。前半38分に先制点を決めていたFW遠藤渓太が、FWエジガル・ジュニオとのワンツーを成功させて左サイドを突破。ゴール前へシュート性のクロスを送った直後だった。 オフサイドポジションにいたマリノスのFW仲川輝人、マーク役のMF宇賀神友弥が激しくもつれ合う。次の瞬間、ボールは仲川の胸に当たってゴールネットを揺らし、松尾一主審もゴールを認めた。当然のように、レッズの選手たちは松尾主審と田尻智計副審に激しく抗議する。 「(仲川が)胸で押し込んだのが見えました。自分よりも後ろの位置にいたら、多分、押し込むことはできなかったので、僕はオフサイドだと思っていました」 刹那の状況を宇賀神はこう説明する。果たして、ボールはレッズの守護神・西川周作のもとへ戻された。仲川のオフサイドが認められ、レッズのゴール前から試合が再開される状況に変わったかと思われた。しかし、田尻副審はオフサイドを告げるフラッグを上げていなかった。 案の定、試合は予想外の展開を見せる。松尾主審がマリノスのアンジェ・ポステコグルー、レッズの大槻毅両監督をハーフウェイライン付近に呼び、大坪博和第4審判員を交えて説明を開始。しばらくして、ボールは再びセンターサークルに戻された。一転してマリノスのゴールが認められた。
「運営が決めている」発言の波紋
敵地を赤く染めたレッズサポーターが大ブーイングを響かせる、異様な雰囲気のなかで試合が再開される。ゴールを巡る判定が二転三転したなかで、両監督にはどのような説明がなされたのか。2点目を失ったレッズの大槻監督は、怒りをしずめるように「すみません」を繰り返した。 「ここで何かを言うことはあまりよくないと思うので、コメントは差し控えさせていただきます。僕がしゃべると、僕の主観になるので話したくない。質問にきちんと答えられずにすみません」 最終的にレッズを3-1で撃破。首位のFC東京を追い上げるためにも必要不可欠な白星をあげた、マリノスのポステコグルー監督も2点目を巡る判定に関しては多くを語らなかった。 「(松尾主審と)何を話したのかは差し控えたい。私たちはレフェリーを常にリスペクトしている。どのような判断を下そうが、自分たちはそれに従ってプレーするだけだ」 しかし、試合が再開される直前、要は仲川のゴールが最終的に認められた直後に、松尾主審は耳を疑うような言葉を発している。間近にいたレッズのDF槙野智章が振り返る。 「レフェリーの方にもミスはあると思いますけど、一番問題だったのは『申し訳ない。このジャッジに関しては自分では決められない』と発言してしまったことですよね」 ピッチ上で下される判定に関しては、言うまでもなく主審が最終的な責任を負う。なのに「自分では決められない」とは、いったいどうなっているのか。その後のやり取りを再現するとこうなる。 槙野「じゃあ誰がルールを決めるのですか。あなたが裁くのではないのですか」 松尾主審「最後は運営が決めている」 槙野「それならばレフェリーがいる意味がないじゃないですか。あなたは何をしているのですか」 松尾主審からは、明確な答えが返ってこなかったという。