『セクシー田中さん』木南晴夏を愛さずにはいられない すべてを“当たり役”にする演技力
「また木南晴夏の代表作が増えた」 日曜ドラマ『セクシー田中さん』(日本テレビ系)を観て、誰もがそう思ったのではないだろうか。彼女の俳優としての魅力を十分理解したつもりではいたが、木南はそんな我々視聴者の想いを、いい意味で裏切った。まだこんな顔があったのかーー。 【写真】田中さん(木南晴夏)と倉橋朱里(生見愛瑠)が公園に二人 木南が演じる田中京子は、“経理部のAI”と評されるほど超優秀なOL。友人や彼氏がいない地味なアラフォーだが、じつは、ベリーダンサーSaliとしても活動していた。この裏の顔は秘密にしていたのに、ある日、派遣OLの倉橋朱里(生見愛瑠)に知られてしまう。朱里は、田中さんに憧れ、ファンになって……。本作は毎回Xのトレンドに入り、民放公式テレビ配信サービス「TVer」でも再生回数の合計が500万回を突破した。 本作は、シャンと背筋を伸ばして「明日も頑張ろう」と前向きになれるドラマであり、日曜の夜にふさわしい作品ではないかと思う。 ここまでヒットしたのは、そんな物語自体の面白さ、生見をはじめとしたキャストの力もあるが、やはり視聴者をトリコにした主演・木南の存在が大きいだろう。ジャズダンス、クラシックバレエ、日舞を特技としている彼女の下地と、たゆまぬ努力があったからこそ映える本格的なベリーダンス、圧倒的なビジュアルの美しさ、それに加えて「田中さん」と「Sali」の昼夜別の顔を見事に演じ分ける木南の演技力など、すべての要素が絡み合った結果だと思う。 木南は、これまでも、映画、ドラマ、舞台など、降り立ったフィールドで抜群の存在感を放ち、俳優として確固たる地位を築いた。 例えば、映画『20世紀少年 第2章 最後の希望』(2009年)では、漫画から飛び出してきたようなビジュアルで驚かせた小泉響子役、ドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズ(2011年、2012年、2016年/テレビ東京系)では、ヨシヒコ(山田孝之)、メレブ(ムロツヨシ)、ダンジョー(宅麻伸)らおとぼけパーティーと共に旅をするムラサキ役、『ブラッシュアップライフ』(2023年/日本テレビ系)では、何度もタイムリープをして人生をやり直す近藤麻美(安藤サクラ)の友人・米川美穂 (みーぽん)を演じるなど、出演作は数えきれない。 その中で、ムラサキのように激しいツッコミや変顔を惜しげもなく披露したかと思えば、今回の田中さんのように、いわゆる“地味”な人物も巧みに演じる。もちろん、キャラが立っている役だけではなく、心の機微をうまく表現し、観る人の心を震わせる演技もやってのける木南。もはや「出演作のすべてが代表作」と言っても過言ではないほど「木南晴夏といえば◯◯」というものがなく、一括りにできない。すべてを「当たり役」にしてしまうのだ。 役者としてだけでなく、いち人間としても惹かれるのが彼女の魅力。雑誌『おとなの週末』(講談社)で連載を持ち『キナミトパンノホン』(講談社)を出版したほどのパン好きで、楽しそうにパン愛を語る彼女はとてもキュートだし、バラエティ出演時は、チャーミングな姿や、快活にトークする姿が垣間見える。そんな彼女の人柄を見て、多くの人が「絶対、素敵な人じゃん!」と心を奪われているのは言うまでもない。木南晴夏はそうした人間力と演技の才能を持ち合わせた愛される俳優……いや、“愛さずにはいられない”俳優なのだ。 『セクシー田中さん』で初めて彼女の魅力に気づいた人は気をつけたほうがいい。木南晴夏は奥が深いぞ。
浜瀬将樹