トム・クルーズがまさかの提案…「ラスト サムライ」の雪辱を「SHOGUN 将軍」で晴らした真田広之
続いた脇役扱い
とはいえ、この映画をとおして真田が得たものは多く、その後、大作への出演が相次ぐ。「ラッシュアワー3」(2007年)でジャッキー・チェンと共演し、日本のアニメ「マッハGoGoGo」が原作の「スピード・レーサー」(2008年)でミスター・武者役、キアヌ・リーブス主演の「47RONIN」(2013年)では大石内蔵助を演じた。 また、米スーパーヒーロー映画「アベンジャーズ/エンドゲーム」(2019年)では、東京を拠点とする日本のヤクザに扮した。ただ、真田自身は脇役扱いが続き、海外作品で主演を張る機会はほとんどなかった。また、作品を通して日本文化の正しい姿を世界に伝えたい、という真田の夢もなかなかかなわなかった。そこに舞い込んだのが「将軍」の製作だ。外国人で初めて「侍」になった実在のイギリス人航海士・三浦按針(作中ではジョン・ブラックソーン、演:コスモ・ジャーヴィス)が見た日本の戦国時代を描く戦国スペクタクルだ。 「真田は『ラスト サムライ』の際、日本や侍文化についてアドバイスをしても、立場は俳優ですから限界があったと明かしています。それから20年近くも遠慮しがちな意識が続いたといいますが、『将軍』は主演兼プロデューサーという大役を任されたため、自身のこだわりが思ったとおりに活かすことができた ようです。アメリカ人が日本に抱くステレオタイプを正すため、登場人物の衣装、かつら、所作などを作りこみ、殺陣を専門とする多数の日本人の専門家を招き、端役に至るまで徹底的に指導したそうです。 確かに真田演じる吉井虎永(徳川家康)や二階堂ふみ演じる落葉の方の衣装、アンナ・サワイ演じる戸田鞠子(細川ガラシャ)が屋敷内を歩く所作などは本格的で、“変な日本”といった違和感はありません。そもそも撮影地となったカナダ・バンクーバーでは、日本の漁村を丸ごと再現するというスケールの大きさ。潤沢な予算が真田のこだわりを支えているかっこうです。製作にあたったディズニー傘下のFXプロダクションズは予算規模を公開していませんが、一説には300億円を超えるという声もあります」(前出の映画担当記者) シリーズの中では、鞠子が「耳ではなく心で聴く修行をなさいませ」と語るなど武士道に通じる哲学的な台詞が多数登場する。ハリウッド生活は必ずしも望む通りではなかっただろうが、鞠子の台詞は「戦わずして勝つ」という虎永の野心にも通じる。世界的な大ヒットを受けて同作のシリーズ化が決定し、真田の続投も伝えられた。渡米後20年がたって真田の“天下取り”がいよいよ始まったようだ。 デイリー新潮編集部
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