『フェルマーの料理』海と布袋の情熱的なやりとり 岳の新たな目標が定まることに
どんな道を歩むにしても、一流への道は決して楽なものではない。料理の世界においても、挑戦を続けていれば壁に直面することは避けられない。そんな中で、成長の軌跡には必ず『踊り場』が訪れる時がある。しかし、それはまさに超えるべき目標が存在するからこそ。立ちはだかる目標が人をより強く、そして大きく成長させるのである。『フェルマーの料理』(TBS系)第6話では、岳(高橋文哉)の新たな目標が定まることに。 【写真】料理を披露する岳(高橋文哉) これまでの功績から、レストランKで徐々に実力を認められつつある岳。しかし、まだ越えるべきライバルが存在することを海(志尊淳)は指摘する。海に「今後どうなりたい?」と聞かれた岳は「僕は海さんみたいになりたいです」と真っ直ぐに答える。岳はレストランの副料理長である布袋(細田善彦)の才能について他のシェフから話を聞く中で、その副料理長としての卓越した技能に興味を持つようになる。 その頃、レストランKはホテルで開催されるパーティーの料理監修の依頼を受ける。布袋がデザートを担当し、他の料理はコンペによって決定されることが海からスタッフへ伝えられた。コンペのアナウンスとともに始まったのは、それぞれのシェフが持ち前の武器を活かした料理を作るべく作戦を練る日々。「レストランじゃ料理が主役。パーティでは料理が脇役」という言葉に目をキラキラとさせる岳は、難解な課題に向かうことを楽しんでいるような様子すらうかがえた。 ある日、岳は街中で家とは別方向に歩く海を見つけ、こっそりと尾行する。「僕たち、いつから別居してるんですか! 海さん」というセリフには流石にクスリと笑ってしまったが、夜な夜な開かれている謎の会合に集まる上半身裸の淡島(高橋光臣)と伝説のシェフ・渋谷(仲村トオル)に「どんなご関係ですか?」と視聴者の疑問を代弁した岳。しかし、その場ではっきりとわかったのは渋谷が海の師匠ということのみ。第7話の予告では「ついに、海様の秘密が明らかに?」という寧々(宮澤エマ)の声が入っていたが、この会合の真の目的が描かれることを次週の展開にこそ期待してもいいのだろうか。 当初、コンペへの参加に躊躇していた岳だったが、海の励ましを受けて、ついに参加を決意する。岳は布袋の特別な料理「乳飲み仔牛のコートレット」から重要なレシピのヒントを得ていた。 岳が繊細に提案した「まずは前菜のクスクスのタブレ」という言葉に、布袋は疑問を込めて「まずは?」と反響させた。岳は、前菜に独創的なひねりを加え、スープを合わせてクスクスのトラパネーゼへと料理を昇華させる。そして、最後にカツ丼を思わせる岳オリジナルの「仔牛のコートレット」をメインディッシュとして提供した。岳が仕上げたのは、1品に見せかけた3品の料理で、パーティーに映える演出がこれまた楽しい。オイラーの等式からインスピレーションを得ながらも。布袋の昔のアイデアを巧みにアレンジした岳の心の底には、「みんなで高みを目指したい」という強い願いがあった。 結果発表の直前、穏やかながらも重みのある海の声が響く。「布袋、ここにいる4人を実力で並べてくれないか」という問いに、厨房の空気は一変する。海の挑発に応えるかのように、布袋は予期せぬコンペへの参加を心に決める。しかし、自慢のコートレットを口にした瞬間、彼は時間が止まったかのように動けなくなってしまう。さらに海は「スー・シェフになってから新しいレシピを創造することを忘れた」と布袋を深く責め、情熱的に「感じるな! 考えろ! シェフなら」と迫る。この熱いやりとりから、海が布袋をどれほど信頼し、尊敬しているのかが伝わってきた。 第6話では、副料理長・布袋の内面が繊細に描かれ、かつてオーナーシェフとして活躍していた彼が、海のために自らの店を閉じ、新しい道を歩む決意をした背景が語られる。言葉は多くはないものの、スー・シェフとしての誇りと情熱を胸に秘めた布袋の姿を、細田が好演している。「でも負けを認めたら楽になってさ」「どうして俺の前に現れたんだよ。出会いたくなかったよ、お前と」という悔しさに満ちたセリフと、今まで布袋が抱えてきた感情が、堰を切ったように涙とともに溢れる細田の演技は特に印象深い。 見事にコンペを勝ち抜き、海から「今回の件で、また一歩俺に近づいたな」という称賛を受け、岳は嬉しそうな表情を見せる。しかし、当日行われるのが数学界で名誉ある楠瀬正美賞のパーティであることを知り、その招待リストを見た岳は過呼吸に陥ってしまう。どうやら、その背景には“広瀬”という人物が関わっている模様だが、詳細は来週までお預けのようだ。越えるべきライバル”の存在は、レストランKの外にもまだ存在するということなのだろうか。海と岳が料理界の真理の扉を開ける日は、まだ少しだけ先になりそうだ。
すなくじら