久保建英はチリ戦大敗に何を感じたか?
レアル・マドリードへの加入を発表した18歳への関心は、日本人だけにとどまらない。試合後、テレビの取材エリアで足を止めれば、外国メディアがその前に殺到し、ペン記者の取材エリアで日本人記者と質疑応答をしていても、間隙を縫って外国人記者のスペイン語での質問が飛ぶ。 それに対して久保建英は、スペイン語でていねいに応対しながら、こう返すのだ。 「質問はひとり1問ずつで」「スペイン語の質問は次で最後」 その様子は堂々としていて落ち着いていた。ピッチ内でのプレーと同じように――。 南米ナンバーワンを決めるコパ・アメリカのグループステージ第1戦。招待参加の日本はチリとの一戦に、慣れ親しんだ3-4-2-1ではなく4-2-3-1で臨んだ。 「今回招集した選手を見たときに、この形で戦おうと選手に伝えた」 森保一監督の言葉からは、思い通りのメンバーを招集できなかったことを感じさせた。その一方で、4-2-3-1を選択した理由のひとつに久保の存在もあったかもしれない。 4-4-2の右サイドでは守備に忙殺されかねない。トップ下で起用すれば、攻撃面で個性をより発揮できるのではないか――。代表初先発であり、ましてや舞台はコパ・アメリカである。そんな配慮があったとしてもおかしくない。 最初の見せ場は12分、左サイドで久保がひとり剥がして敵陣に進入し、グラウンダーのクロスを流し込む。これは上田綺世に届く寸前にクリアに遭ったが、今後への期待を抱かせるワンプレーだった。 だが、その後は突破を試みては阻まれるシーンが続く。後半開始早々には、相手ゴール前でドリブルを開始した途端にふたりに寄せられ、左足で自由に持たせてもらえない場面もあった。チリが久保を警戒している証しだった。 そんな久保にボールが集まり出すのは、2点のビハインドを負った後半半ばあたりから。20分に前田大然にスルーパスを通してチャンスを作ると、この日一番の見せ場が訪れる。 背筋をピンと伸ばしてパスを受け、流れるようなステップワークでふたりの間を割って入ると、左足を振り抜いた。だが、GKにコースを消され、シュートはわずかに左へとそれてしまう。直後、久保は両手で地面を叩き、感情をむき出しにした。 「たまにリミッターが外れるというか、ああやって何も考えずにスルスルッと抜けるときがあるんです」 この場面を久保はそう表現した。身体が自然と動く――そんな感覚なのだろう。 「最後、言い訳するとボールがちょっと緩くてズレちゃって、自分がファーに打てばよかった話なんですけど、あれは今でも悔しいです。0-2だったので、あそこで決めていたら、こっちの時間帯にググッと引き寄せられたと思うので、後悔しています」