【GW明けに注意】会社へ行きたくなくなったらまず読むべき「傷病手当金」の基礎知識
精神的な疾患を含めて、病気やケガで仕事を休んでいる人がもらえる「傷病手当金」。申請すれば誰でももらえるわけではなく、いくつかの支給要件を満たす必要がある。『医療費の裏ワザと落し穴』の第279回では、この春から社会人生活がスタートする人たちに向けて、傷病手当金の基礎知識を解説する。(フリーライター 早川幸子) ● 新しい環境に順応できず 仕事に影響が出ることも 「傷病手当金をもらって、しばらく会社を休もうかな」 先日、友人がこんなことをつぶやいていた。どうやら勤務先の人間関係で大きなストレスを抱え、メンタルが不安定になっているようなのだ。 「傷病手当金」は、病気やケガで仕事を休んでいる人がもらえる所得保障で、精神的な疾患での休業も給付対象だ。しかし、給付を受けるには一定の要件を満たす必要があり、申請すれば誰でももらえるわけではない。 新年度が始まってから、そろそろ1カ月。新社会人のなかには新しい環境に順応できず、メンタルに不調を来している人もいるだろう。 無理すると、うつ病や適応障害などを引き起こし、仕事を休まざるを得なくなるケースもある。そこで今回は、前回の「高額療養費」に引き続き、新社会人が覚えておきたい「傷病手当金」の基礎知識について確認しておこう。
● 若い世代に多い メンタルヘルスでの受給者 傷病手当金は、全国健康保険協会(協会けんぽ)や、組合管掌健康保険(組合健保)など、企業や団体に雇用されている人が加入する健康保険に備えられている給付のひとつだ。被保険者(加入者)が業務外の病気やケガで仕事を休み、勤務先から給与を払ってもらえなかったり、減額されたりした場合に、その間の所得を保障してくれるものだ。 給付対象の疾患は、がんや心疾患など身体の病気、骨折などのケガ、うつ病や適応障害などの精神や行動の障害など幅広い。なかでも、近年、受給者が増加しているのがメンタルヘルスだ。 協会けんぽの「現金給付受給者状況調査報告」(令和3年度)によると、給付理由として最も多かった疾患は、「精神及び行動の障害」で32.96%。「新生物」の14.56%、「筋骨格系及び結合組織の疾患」の8.87%を抜いて、大きな割合を占めている。 特に、メンタルヘルスで傷病手当金の受給しているのが若い世代だ。「精神及び行動の障害」を理由に傷病手当金を受給した人の割合は、50~54歳の人は28.26%、55~59歳の人は20.94%なのに対して、20~24歳は47.64%、25~29歳は50.97%。20歳代では、半数がメンタルヘルスを理由に傷病手当金を受給しているのだ。 ただし、たんに「眠れない」「抑うつ症状がある」と勤務先に訴えても傷病手当金をもらうことはできない。給付を受けるには、次の支給要件を満たす必要がある。 ●支給要件 (1)病気やケガをした理由が業務以外であること 健康保険の傷病手当金は、業務以外の理由で病気やケガをしたときの所得保障という位置づけだ。仕事中や通勤途中の病気やケガは、労働者災害補償保険(労災保険)で保障される。 (2)「労務不能の状態」であること 仕事ができない状態であることを、医師などの療養担当者の意見をもとに、仕事の内容などを考慮して健康保険組合が判断する。労務不能と判断された場合は、自宅療養も給付対象。 (3)連続して3日間休んだあと、4日以上仕事ができない状態であること 傷病手当金には3日間の待期期間がある。給付を受けられるのは、連続して3日仕事を休んだ後の4日目以降。土日・祝日などの公休日、年次有給休暇も待期期間に含められる。 (4)休業中に給与の支払いがないこと 仕事を休んでいる間、勤務先から給与が支払われていないことが条件。給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支払われる。 この4つの要件の中で、今回、特に覚えておきたいのが(2)の労務不能の状態の判定についてだ。