【とっておきメモ】引退中野栄治さんの口からは何度も何度も「ブローザホーン」の名前が…
<とっておきメモ> <宝塚記念>◇23日=京都◇G1◇芝2200メートル◇3歳上◇出走13頭 ブローザホーンは今春に調教師を引退した中野栄治さん(71)が例えでよく使っていた。師の引退取材をした際にその名が何度も何度も出てきたことを思い出す。 管理馬でG1を勝ったトロットスター(01年高松宮記念、スプリンターズS)。師は「“ブローザホーン”みたいに小さい馬でね。人間と一緒で、短距離の馬はごついでしょ。長距離は細いでしょ。トロットは“ブローザ”みたいにこぢんまりしている」と馬体を挙げた。 師が騎手時代に騎乗したドロッポロード(80年クモハタ記念、81年金杯・東、東京新聞杯)を語ったときは「“ブローザホーン”みたいで、ジョッキーとして乗りやすい馬。そして差し馬だね。差し馬はスローだろうが何だろうがすっと差し切れる。逆にスローの方がいい。一瞬だよ」。いつも明るく、おだやかな師だが、師が“ブローザホーン”と言うたびに、さらに相好を崩していたのを思い出した。「ブローザホーンのことが好きなんだな」。あの顔を見れば誰もがそう思う。 当然、ブローザホーン自体の話題にもなった。「すごい馬だよ。ゴールを過ぎても耳が前に向いている。集中力が違うんだ。小差で勝った負けたではなくて、そういうところで、この馬はすごいんだと分かる」。 引退する師を祝うかのように最後の年に日経新春杯を制した同馬。阪神大賞典3着、天皇賞・春2着と師の手から離れた後も好走を続け、そして、春のグランプリ、宝塚記念で優勝を果たした。それも豪快な差し切りで。ブローザホーンの躍動を、きっと、いや絶対に、目を細めて喜んでいるに違いない。【舟元祐二】