中国パンダ外交「融和的政権との友好演出で一貫」功罪は紙一重 東京女子大・家永真幸教授
■外交資源としてのパンダ
中国はパンダを「外交資源」としてどう生かしているのか。
家永氏は「中国が相手の国の世論をどう調査しているかまでは分からないが、相手の政府が親中的、融和的な政策をとっているときこそ友好の演出で送ることで一貫している。(日中国交正常化の)田中角栄首相の訪中もそうだ」と語る。
最近では、今年6月に中国の李強首相がオーストラリアを訪れ、同国に新たなパンダのつがいを貸し出すと表明した。中国と豪州は、新型コロナウイルスの起源などを巡り関係が悪化していたが、2022年に豪州で政権交代が起きた後は、関係改善の流れが顕著になっている。家永氏は「この件もそういう文脈だと思う。傷ついた中豪関係を修復していく中で、比較的融和的な政策をとっている政権に演出として使ういつも通りのパンダの送り方だと思う」と分析した。
■「パンダの話ぐらいは」
日本外交にとってパンダはメリットがあるのか。家永氏は「メリットとデメリットが紙一重だが」と前置きしたうえで見解を示した。
「中国政府は必ず政策的な判断をして、パンダを出すか出さないかを決めている。『中国との関係が悪いときでもパンダの話ぐらいはできていますよ』とアピールするメリットにはなり得る場合もある」と話した。
さらに「日本の対中感情がひどく悪い中でそんなアピールをしても支持されないが、今のようにずっと関係が悪くて何とかしなければならない雰囲気のときにパンダが来れば、一応政府は中国とコミュニケーションをとれているというアピールにはなる。政権内部で中国とのパイプを〝売り〟にしたい人にはアピール材料になるかもしれない」と指摘した。
■中国国内の自尊心
気になるのが今後、中国が「パンダ外交」をどう展開するかだ。
家永氏は「中国は外交の場面では『パンダ協力』という言い方をしている。世界のみんなが大好きなパンダをみんなで守っていくために、中国がリーダーシップを取る形で、その他の国と協力してやっていく路線で今後も続けると思う」と語った。