長野の山岳遭難、上半期は2割増加 夏山シーズンに向け注意呼びかけ
長野県内の今年前半の山岳遭難が増加傾向を見せており、梅雨明けの夏山本番に向け関係者は警鐘を鳴らしています。年明け6か月の遭難件数は前年に比べ20%以上増え、その多くは不十分な装備や技量不足が原因。登山の専門家は「気軽に行けるからという動機だけの登山は危険を招く」と、しっかりした情報収集など周到な準備を求めています。 【写真】多発する冬山遭難 遭難は「出発前」の自宅から始まっている?
遭難者は23人増加の126人
長野県内の今年1月1日から6月18日まで約半年間の遭難は、長野県警の調べで106件に上り、前年同期(85件)比で21件の増加。死者17人(前年同期比1人増)、行方不明5人(同4人増)、負傷者59人(同13人増)、無事救出45人(同5人増)で、遭難者の合計は126人、23人の増加でした。 長野県警が毎週公表している山岳遭難発生状況の「週報」によると、6月11日から18日までの間の遭難は長野県小谷村(おたりむら)と新潟県糸魚川市の境にある雨飾山(あまかざりやま)で夫婦が道に迷い翌日救出、白馬鑓ケ岳の下山途中の滑落・負傷、戸隠山の滑落・死亡、白馬大雪渓の滑落・負傷など9件あり、遭難者は10人。最高齢は82歳でした。 さらに6月18日から24日までの遭難は再び戸隠連峰西岳で滑落・死亡、北穂高岳から縦走途中の滑落・負傷など6件あり、3人が死亡、1人が行方不明。この中には山菜採りなどで入山しての遭難・死亡が2人います。遭難者6人のうち50~70代が4人を占めました。
原因は転落・滑落が4割弱
1~6月期の遭難106件の山域別は「槍・穂高」「後立山」など北アルプス関係が45%を占め、八ケ岳連峰は11%でし[写真](上)6月中に滑落など5件の遭難が相次いだ白馬鑓ケ岳(はくばやりがたけ)の現場付近、(下)6月21日、単独登山で滑落・死亡した戸隠山西岳の現場付近(写真はともに長野県警提供)た。 1~6月期の原因別では、「転・滑落」が最も多い36%。「道迷い」の24%、「転倒」17%と続きます。浮き石に乗り滑落(6月14日・須坂市の山林)、雪上でスリップ・滑落(6月16日・白馬鑓ケ岳)、下山に必要な装備品を紛失、行動不能に(同日・白馬鑓ケ岳)といったケースが多く、県警は遭難統計に添えて「雪渓上の滑落事故では装備品や技量の不足に原因があるものが見受けられた」と指摘しています。 年齢別では遭難した男性94人のうち40代~70以上の中高年が59人、62%と過半数を閉め、女性の遭難者でも32人のうち40代~70以上は24人、75%と大半でした。 これまでの遭難でも指摘されてきた疲労などによる「つまづき」や「転倒」などが遭難につながることや、登山者の高齢化傾向があらためて浮き彫りになり、遭難の増加とともに夏山シーズンへの不安な兆候となっています。