名スカウトがセンバツで選んだドラフトの逸材8人
いよいよセンバツ高校野球は習志野対東邦の決勝を迎える。東邦の「投手・3番」の“二刀流”石川昂弥はプロ注目のドラフト候補だが、今大会では多くのドラフト候補が躍動した。 ヤクルトのスカウト責任者として古田敦也、宮本慎也らを発掘した片岡宏雄氏に、気になる逸材8人をピックアップしてもらった。 片岡氏は、今大会を総括して「ドラフト上位候補として評判の投手らを擁するチームが勝ち進めなかった。今日良くても明日は悪い。春の高校野球の特徴である不安定さが顕著だった。そういう意味でスカウトは困っただろう」と、厳しく評価した。 「不安定」なセンバツでも片岡氏の目に留まった候補はいた。星稜の奥川恭伸だ。屈指の好カードとなった1回戦の履正社戦では、17奪三振の3安打完封勝利。2回戦の習志野戦で散ったが、最速は153キロをマークした。 「やはり一番は奥川になるだろう。最速153キロをマークした。変化球の質、コントロールも含めて完成度は高い。17三振を奪った履正社戦では、優勝までを逆算して、力を抜いて投げているのかな、と思っていたが、サイン盗み騒動を試合後に監督が起こした習志野戦では、スライダーに頼り過ぎていて、しかも、そのほとんどが甘かった。ボールをじっくりと見られるほど威力がなかった。これが3年春の段階での高校生の怖さ。どこかのスカウトがマー君級と言っていたが、それはあくまでも社交辞令的なスカウトコメント。夏までの成長を見る必要があるだろう。現段階では1位で競合するような力はない」 投手では、奥川の他に、龍谷大平安戦で、延長11回を一人で170球を投げきって4安打2失点で敗れた津田学園の大型右腕の前佑囲斗、八戸学院光星戦で完封勝利して最速150キロをマークした広陵の河野佳、21世紀枠から出場して盛岡大付戦で延長11回にサヨナラ負けを喫したが、最速144キロの直球にスライダー、チャンジアップをうまく使って11三振を奪い存在感を示した石岡一の岩本大地の3人の名前がリストアップされた。 「津田学園の前と龍谷大平安の左腕野沢の2人が延長11回まで投げ合ったが、プロ向きなのは前の方だ。重心がしっかりと安定して球速は、140キロ前後だが、打者の手元でボールが伸びるような球質があった。ノビシロを感じさせる。広陵の河野のいいところは安定感。最速は150キロが出ていたし、いわゆる球筋のいいピッチャーだ。石岡一の岩本は、昨年旋風を巻き起こした金足農の吉田輝星の姿に重なる。下半身主導型のフォームも似ているし身長はないが球離れがいい。最速は144キロ程度だったが、もっと出るだろう。河野も岩本も変化球でカウントを取れて、緩急、間をしっかりと作ることができる。夏へ向けて成長が楽しみだし、ドラフトにかかってくる素材だと見ている」