茨城 栃木 宮崎の「一本調子」は“なまった”なれの果てか それとも“オリジナル”の日本語か
■大陸から持ち込まれた「アクセント」 そして、全体の調子が、茨城や栃木の方言と似ていると感じられることも少なくない。日本語のアクセント研究の“大御所中の大御所”と言える金田一春彦(1913~2004)をはじめとした国語学界の主流の考え方では、こうした「無型アクセント」は各地方でアクセントが単純な方向へ変化し、最終的になくなった、なれの果てだとされている。 一方、旧静岡県新居町(現湖西市)で燃料店を営みながら、方言研究を続けた山口幸洋(1936~2014)は、これに真っ向から対立する仮説を立てた。 日本語の最も古い形として「無型アクセント」は、もともと日本で広く話されていた。そこに大陸からアクセントのある言葉が持ち込まれ、影響を受けて、日本語は次第にアクセントを持つようになる。 しかし、それが波及せず、現在まで残っているのが「無型アクセント」地域なのだ、と。なるほど、それなら「無型アクセント」が、北関東、南東北から遠く離れた九州に、また、全国に点在する不思議が、不思議でなくなり、自然なことに思えるのだ。 (SBSアナウンサー 野路毅彦) 放送批評懇談会が日本の放送文化の質的な向上を願って、優秀番組や個人、団体を顕彰するために、1963年に創設した「ギャラクシー賞」。2023年度「ラジオ部門」で大賞を受賞したのが、「SBSラジオギャラリー 方言アクセントエンターテインメント~なまってんのは、東京の方かもしんねーんだからな~」 この番組では、日本語のアクセントに注目し、「静岡県内の一部や栃木県などの人が話すアクセントのない言葉こそが、もともとの日本語で、いま標準語とされる東京の言葉の方がなまったものかもしれない」という説をさまざまな例を挙げながら考察していった。今回、番組内容を再構成し、記事化した。
静岡放送