「駅舎」がスチール物置の秘境駅 零下20度 120人が糠南クリパ
「秘境駅の里」で町おこしに取り組む北海道幌延町のJR宗谷線糠南(ぬかなん)駅に22日早朝、全国から「サンタ」が集まった。名付けて「糠南クリパ」。クリスマスを祝う恒例のイベントで今年で10回目。小さな無人駅に過去最多の約120人が集い、末永い「存続」を願った。 【写真】赤い三角帽を「耳」に乗せ、「ぬかにゃん」に飾り付けられた糠南駅=2024年12月22日午前7時8分、北海道幌延町、奈良山雅俊撮影 「駅舎」は家庭用のスチール物置。改札口もなく、ホームは板張りで停車するのは1日上下6便の普通列車だけ。この日は下り6時30分発、上り6時48分発の列車がともに約15分遅れで到着。赤いサンタ帽の参加者たちが零下20度の駅に次々と降り立った。 眉毛や髪の毛が白く凍り、ぬれたタオルは一瞬で「板」に。そばの空き地ではたき火がたかれ、駅舎はクリスマスムードいっぱいの「ぬかにゃん」に飾り付けられた。恒例の四角い手作りケーキは2台。糠南駅に立つ駅長さんと、除雪など駅の世話を続ける地元の「ご主人さん」が描かれた。 常連も多く、海外からの参加者も。全員が糠南駅が来年以降も存続することを喜び、「また会えるね」などと白い息を吐きながら地元の人が差し入れた豚汁をすすった。 韓国の鉄道会社の社員で今回が3回目の男性(49)は「韓国じゃあ物置が駅なんて信じられない。こんな寒い日のたった1日にこれだけの人が集まる、この不思議な世界がたまらない」。10回連続で参加した愛知県豊田市の会社員、伏見彬志(あきもと)さん(31)は「初回は大学生で、このときだけ夜開催。イブの夜にヘッドライトで集まり、怪しげな感じでした」と懐かしそうに思い出を語っていた。
朝日新聞社