《ブラジル》人口の1割外国人の岐阜県美濃加茂市=藤井市長が現地視察 「ブラジル人と机並べて学んだ」
「中学校でブラジル人の同級生と机を並べて勉強していたので、彼らを普通に信用しています」――岐阜県美濃加茂市長の藤井浩人さん(ひろと、39歳)は同市議会議長の森弓子さんと一緒に1月31日晩にブラジルに到着。2月1日にはサンパウロ市のブラリジア学園などを視察し、有名なブラジル人漫画家のマウリシオ・デ・ソウザ事務所で日伯交流担当として活躍する美濃加茂市で育った日系の若者と懇談した。
美濃加茂市は2024年1月1日現在で総人口5万7532人中、外国人登録者が5944人、10・3%を占める。うち最多はフィリピン籍2557人、続いてブラジル籍が2164人。外国人のうちでブラジル籍は36・4%になる。藤井市長は「もともとは圧倒的にブラジル人が多かった。彼らとどうやって共生していくは、市政の大きな課題です。だからこうやって現地視察に来ています」と説明する。 美濃加茂市では独自に、外国人児童生徒初期適応指導教室「のぞみ教室」を行い、同市に住民登録をした6~15歳までの外国人児童生徒に、学校教育で必要な生活指導や初期的な日本語指導を一定期間集中的に行って、小・中学校への適応を進めているという。 2日午後、帰伯子弟支援をするNPO『カエル・プロジェクト』代表の中川郷子さん(66歳、東京都出身)=サンパウロ市在住=から説明を1時間ほど受けた。同プロジェクトは日本移民100周年の2008年に開始され、ブラジル三井物産基金の支援を受けている。日本から帰国したデカセギ子弟がブラジルの公立小中学校に馴染めるような補習や心理面の支援などを行っている。
中川さんは「日本で特別支援学級に通う日系人の子供がものすごく多いことが気にかかっている」とし、「実際に発達障害なら仕方ないですが、診断のやり方に疑問が残ります。診断では日本人向けの検査を通訳付きでやっている。質問内容を理解するには文化的な違いもあるので、通訳が難しい。だから実際には言語の問題なのに、認識能力と誤診されて発達障害扱いされている可能性がある」と疑問を呈した。 中川さんは「ただし両親側の理解力にも問題がある。今日本で子供がいる日系夫婦の世代は、子供の頃に親に連れられて訪日して日本でまともな教育を受けずに育って、自分が子供を作る世代になった年代が多い。日本で日本語でもポ語でもきちんとした教育を受けていないから、学校から子供に渡された父兄宛ての書類などをきちんと読む能力がない」と現状を問題視する。 中川さんはカエル・プロジェクトで昨年23人の子供の対応をしたが、「中には高校3年で中退して帰ってきたもったいない子もいた。卒業してからブラジルに帰ればいいのに、おじいちゃんの病気が悪化したからと家族で昨年ブラジルへ帰国した。結局おじいちゃんはすぐ亡くなり、1カ月前にはお父さんまで交通事故で亡くなるなど本当に大変な状況の子もいます」との現状を伝えた。 藤井市長は、ブラジルの学校では外国籍児童との待遇の差がない現状を視察し、「こちらの教育の考え方は進んでいる部分がある。先生が生徒や父兄にかなり踏み込んだ意見を伝えて、それがうまく機能していると感じた。日本では外国人の保護者に子供を就学させる義務はないが、日本でももっと外国人父兄にちゃんと向き合っていけるのではないか」との感触を得たという。藤井市長と森市議会議長は5日晩の便で帰路に就いた。