プロ合格の井上尚弥の弟は兄以上の強気!
デビュー戦は日本ランカーと試練マッチ
「ライバルは兄です」と公言してはばからない。 「兄よりも攻撃的で気が強いところが違い。そこを魅力にしていきたい」 自分で自分を知っている。兄が万能型ならば、弟は超攻撃型だ。 同じ大橋ジムで兄弟とのスパーリング経験が豊富なWBC世界フライ級王者の八重樫東は、「モンスターと呼ばれる兄はパーフェクトなボクサーだが、弟は狂犬です(笑)。一発打たれると2発、3発必ず打ち返してくる気の強さを持っている。プロ転向を決めて、この数か月でビックリするほど成長している。恐ろしい兄弟です」と評した。 アマ時代の戦績は52勝(14KO・RSC)5敗。JOCジュニアオリンピックカップ優勝などの勲章を持っているが、高校時代は2冠に終わった。本来ならば5冠を狙える可能性があったが、今夏敗れたインターハイの判定が、あまりにも醜く、例え残り2大会に出場しても、どうせ判定に泣かされるならばと、家族で話し合った上でプロ転向を決断した。 「最初からアマはプロのための経験としてやったものでしたから。まだプロテストですが、やはりプロのリングは全然違いました」 もう五輪出場への未練もない。 プロテストに合格したことでデビュー戦は、12月6日、八重樫の世界戦、村田諒太のプロ第2戦、兄の東洋太平洋王座の決定戦がある大舞台の前座で、日本ミニマム級8位の福原辰弥(本田フィットネス)と対戦することが決まった。兄弟ボクサーと言えば、今後何かと亀田3兄弟と比較されることになるだろうが、デビュー戦のマッチメイクを見る限り「試練を乗り越えて実力でチャンスをつかめ!」という本物路線。井上弟は「福原さんは正統派。僕と噛み合うと思う。兄以上にインパクトのある試合で勝ちたいし、兄よりひとつ早い3戦目で日本タイトルを奪いたい」と、前のめり気味に抱負を語った。 帰り支度をしている村中をもう一度つかまえた。 ――井上弟は、将来、どんなレベルまで行くと思う? 「もし次にスパーではなく試合でやったら僕が負けるかもしれない(笑)。彼はライトフライ級でしょう。僕のいるフライ級には上がって来ないようにして欲しいです」 世界ランカーの言葉が、冗談には聞こえなかった。 (文責・本郷陽一/論スポ、アスリートジャーナル)