U-23日本代表がA代表では実現できていないことを実践し、パリ五輪出場へ一歩前進
欲を言えば、試合終盤に次々と訪れた決定機を生かし、さらに追加点を奪っておきたかった試合ではある。だが、勝負という点では、ほぼ危なげなかった試合内容は、スコア以上の完勝と表現して差し支えないだろう。 【画像】サッカー熱上昇中の局アナ「インタビューカット集」 パリ五輪アジア最終予選を兼ねた、U23アジアカップ。日本はグループリーグ第2戦で、UAEに2-0と勝利した。前半27分にDF木村誠二が、後半21分にMF川﨑颯太が、ともにクロスからヘディングシュートを決めての2得点である。 日本はこの試合、初戦の中国戦から先発メンバー11人のうち7人を入れ替えて臨んでいる。フィールドプレーヤーに限れば、2戦連続先発出場となったのは3人のみ。大岩剛監督が採った、大胆な入れ替え策と言っていい。 UAE戦でゲームキャプテンを託されたMF山本理仁は、しかし、それを聞いても「特に(思うことは)なかった」と言い、こう続ける。 「正直、変わるだろうと思っていたし、この先(大会は)長いので、必ず休まなきゃいけない時がくるから。いろんな親善試合で、いろんな(選手の)組み合わせをやっていたので、まったく不安はなかったです」 実際、日本の選手たちは攻守両面で円滑につながり、1試合を通してほとんどの時間でUAEを圧倒し続けた。今大会初先発、初出場となったDF鈴木海音が語る。 「個人としては、1試合目に出られなかった悔しさを全部ぶつけようと思っていたし、そういう気持ちを全員が持っていたと思う。今日は試合前からみんな、すごく声が出ていたし、活気があった。やってやろうという気持ちを全員が持っていたと思う」
日本が試合のなかで唯一バタバタと落ちつかない戦いを見せたのは、UAEが長身のセンターフォワードを生かしたロングボールで日本陣内に攻め入ってきた、立ち上がりの5分程度だっただろう。 「(UAEの戦い方を)スカウティングもしていたし、予想どおりではあったので、チームとして面食らったというよりは、僕個人のところでもっと(ヘディングで)勝てなきゃダメだよねっていう感じ」とは、センターバックを務めた木村。しかし、完全に競り勝てないまでも、時間とともに体をぶつけて競り合えるようになると、UAEはたちまちおとなしくなった。 木村とセンターバックでコンビを組んだ鈴木が語る。 「(ロングボール)一発でやられるのが怖さでもあるので、そこは絶対にやらせない気持ちでいた。(誰かがヘディングで)負けても全員でカバーする意識でやれていたので、大きな不安はなかった」 とはいえ、90分のなかでは、試合の流れが大きく変わりかねない事態にも何度か見舞われている。前半なかばで先制するも、なかなか追加点を奪えなかった日本は、その間、PKの判定がノーファールに、ゴールの判定がオフサイドに、いずれもVARによって日本の得点(得点機)が取り消されたのである。 それでも、日本の選手たちは「(VARの判定を待つ間も)全員で『これが取り消されてもリードしているから大丈夫だよ』という声かけができていたので、それほど慌てることはなかった」(鈴木)。 UAEを勢いづかせることがなかったのは、日本の選手たちが決して気持ちをきらすことなく、戦い続けた結果である。 初戦の中国戦では、前半17分にしてDF西尾隆矢が退場となり、アディショナルタイムも含めれば、ほぼ90分間を10人で戦う非常事態に陥った。ピッチに立っていた選手には、通常の1試合分以上の疲労が蓄積していたとしても不思議ではない。 だが、2戦目で大きく先発メンバーを入れ替えてもなお、新たな顔ぶれが緊張する様子も見せず、ピッチ上で頼もしいばかりのプレーを披露した。 「(ポジション的に)近い距離感の佐藤(恵允)選手、荒木(遼太郎)選手とは、練習での紅白戦からうまく連係がとれていた」とは、この試合が初先発、初出場だった左サイドバックの大畑歩夢である。 「誰が出ても勝つ。誰と組んでも機能する」とは、A代表の森保一監督が口にする言葉だが、それを実現するのは簡単なことではない。ところが、U-23日本代表の面々は、パリ五輪出場がかかった大舞台で、それをピッチ上で実践して見せているのである。