常識を超えた41歳の葛西 勝利への貪欲さ
葛西紀明は、1月11日のW杯バートミッテンドルフ大会フライングヒルで優勝を果たし、41歳7ヶ月の史上最年長優勝記録を塗り替えた。ヨーロッパでは選手やファンから"レジェンド"と尊敬されている彼にとって10年ぶりのW杯勝利は、7度目の出場となる五輪へ大きな弾みをつけるものになった。 【動画】五輪開催地 ソチってどんなところ? ”昔”は40歳でも勝てた これまでの常識では考えられなかった41歳での活躍。だが、98年長野五輪で日本が金2、銀1、銅1を獲得するチームをヘッドコーチとして率いた小野学氏(故人)は、「ジャンプの競技年齢は40歳まで可能だと思う。15歳くらいの選手から40歳の選手まで勝てる可能性を持っている競技だ」と話していたこともある。 選手が必要とするのは助走路を滑り降りる数秒間、クラウチング姿勢を保つ持久的筋力と、踏み切りの瞬間にパワーを発揮する瞬発的な力。だが、すべてが「時速80~90キロ前後で移動している中での動作」と極めて難しいうえに、ジャンプ台の形状や条件は、それぞれことごとく違う。そのため洗練された技術だけでなく、経験や精神力も重要な要素になるからだ。30歳を超えても、それなりに体力を維持していれば戦えるはずだと。 時代が変わっても葛西が強い理由 だが、長野五輪の時代と違って今はジャンプスーツが体のサイズのプラス2センチになって、かつてのようには空中でスーツによる浮力を受けられなくなっている。踏み切りでのパワーも必要になっているのだ。 そんな中で葛西がなぜトップレベルでいられるか、それか彼の持っている、「死に物狂いでトレーニングをした20代の頃は、日本チームでもダントツの数値を出していました。その頃に比べると体力は落ちてきているけど、それが他の選手と同じくらいのレベルになったかな、という感じですね」という身体能力の高さゆえでもある。 葛西は体力を維持するためにも真摯な姿勢を保って努力をしている。その一例がトレーニング機器を買い込んで自宅にトレーニングルームを作り、時間があれば練習をしていることだ。さらに遠征中でも毎朝必ず長時間のランニングに出かけ、体重管理にも気を使っているのだ。