VIVANTから大奥まで。地上波ドラマの逆襲!? 2023年ヒットと激熱ドラマ大賞
●人生はプレゼント賞「ブラッシュアップライフ」(日本テレビ)
人生やり直せたらどうするか、というテーマに、いくつかの見本パターンを具体的に提示してくれ、そこに友情の尊さ、不倫の無駄さ、90年代のヒット曲の層の厚さなどオプションをつけて包み込み、プレゼントしてくれたバカリズムの脚本に泣いた。なにげなく転生を繰り返している河口さん(三浦透子)がキーマンになる、というのも最高。12月28日~29日一挙再放送されるので、今一度ともに白い扉を叩こう!
●地上波ドラマ大賞「VIVANT」(TBS)
堺雅人や役所広司の演技はもちろん最高だったが、個人的には、顔がチワワとドーベルマンくらい違うのに、しっかり役所広司の若い頃に寄せてきた林遣都にびっくりした。 映像や演技だけではなく、考察班の推理もアツかった。卵の黄身や、赤飯を食べる二階堂ふみの表情についてさえ検証の手を緩めない考察動画に夢中になり、おかげで私の中で「VIVANT」は5つ以上のパラレルワールドがある。「考察班」は今年の流行語にノミネートされても良かったと思うほど。こちらも年末年始一挙再放送!
●同率:地上波ドラマ大賞「大奥」(NHK)
タイムスリップし、隠されていた本当の日本史を見てしまった感! 大奥の廊下をランウェイに変える冨永愛に見惚れ、鈴木杏の「それでねそれでね」に萌え、顔をゆがめ吠える仲間由紀恵に戦慄。和宮を演じた岸井ゆきのの慶喜ディスリ「アホなん?」「スカンタコ」は、悪口にもかかわらずα派が出ているのかと思うほど、リフレッシュ効果がすごかった。 2010年頃、民放局から時代劇が消え、このまま衰退するとまで言われた時期が嘘のよう。今一番見たいジャンルかもしれない。来年はフジテレビでも「大奥」が始まる。こうなれば徳川にどっぷり漬かるとしよう。観ます!
2024年、昭和のオッサンブームが到来!?
地上波ドラマは2024年冬クールも楽しみだ。人気ドラマ「おっさんずラブ」の続編「おっさんずラブ-リターンズ-」(テレビ朝日系)がスタート。そして宮藤官九郎脚本、阿部サダヲ主演の「不適切にもほどがある!」(TBS毎週金曜)。こちらは昭和おやじがタイムスリップし、不適切発言で令和の停滞した空気をかき回すドラマだそうだ。 原田泰造主演の「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」(フジテレビ毎週土曜)は、昭和のおっさんが、新常識へのアップデートを図るハートフルな内容のようである。 辰年は昭和のおっさんがトレンディになるかもしれない。 チャンネルをつければ、そこには別世界が広がる。新たな名作がどんどん生まれるが、これまでの名作がくれた感動が消えることはない。心の容量は∞。ウキウキもじーんも、果てしなく蓄積し、生きるエネルギーに変わるのだ。 ありがとうドラマ。今年もいろんな人生や景色を体感できて楽しかった。2024年も、よろしく感動。心躍るストーリーと出会えますように! 田中 稲(たなか いね) 大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)など。 ●オフィステイクオー http://www.take-o.net/
田中 稲