不登校生が「アメリカ留学」を決意するまで 同時通訳者・田中慶子
黒木)ご自分の好きなことだけをやっていらしたという感じですか? でも、高校は卒業なさったのですよね。 田中)ギリギリですね。 黒木)卒業してから、逃げ出すようにアメリカに行ったということですが、アメリカを選んだ理由は何かあるのですか? 田中)正直、他は何も知らなかったのですね。海外に行くなら「アメリカかな」という。恥ずかしいのですが。 黒木)でも、「それなら行ってみようかな」と思われたのですね。 田中)子どもにとって、学校は社会ですよね。社会に馴染めないということと、社会問題について議論しているときに、「日本社会ってどうなのだろう」という疑問がどこかにあったのだと思います。だから「違う世界を見てみたい」という気持ちがあったのでしょう。ある日、そんななかで「これからは英語が必要だと思う」と母親に「ポロッ」と言ったら、親もすごく心配していたようで……。 黒木)それはそうでしょう。 田中)私は何も考えずに「ポロッ」と言った一言だったのですが、翌日、母が「あの話をちょっと真剣に考えてみたら?」と言うのです。そう言われて、「あの話って何?」みたいな。 黒木)「軽く言ったつもりが」ということですか? 田中)「海外に留学したいのでしょう?」と言われて、「そういえばそんなこと言ったなあ」と思ったのですが、このチャンスを逃してはいけないと思い、「そうそう留学したいの」と言い出したのですね。 黒木)そのお話が、『不登校の女子高生が日本トップクラスの同時通訳者になれた理由』という本なのですね。 田中)トップクラスかどうかわかりませんが。 黒木)トップクラスだと思いますよ。錚々たる方々の同時通訳をなさっているので。そういう経緯があったのですね。
田中慶子(たなか・けいこ)/同時通訳者 ■愛知県出身。 ■劇団研究員、NPO活動を経てアメリカ最古の女子大であるマウント・ホリョーク大学を卒業。 ■帰国後は衛星放送、外資系通信社、NPO勤務ののち、フリーランスの同時通訳者に。 ■天皇皇后両陛下、総理大臣、ダライ・ラマ、テイラー・スウィフト、ビル・ゲイツ、デビッド・ベッカム、U2のBONO、オードリー・タン台湾デジタル担当大臣などの通訳を経験。 ■2010年、コロンビア大学でコーチングの資格を取得し、現在は通訳の経験をもとに、ポジティブ心理学なども取り入れたコミュニケーションのアドバイスをするコーチングの分野にも活動を広げている。 ■2020年、慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科修了。著書に『不登校の女子高生が日本トップクラスの同時通訳者になれた理由』、『新しい英語力の教室 同時通訳者が教える本当に使える英語術(できるビジネス)』。