「つながりにくさ」に揺れるNTTドコモ。前田新社長が語った改善策と収益改善のカギ
「ドコモが提供するあらゆるサービスは、すべて通信が土台になっている」 6月14日にNTTドコモの代表取締役社長に就任した前田義晃氏は、18日に開いた就任会見でこう強調した。 【全画像をみる】「つながりにくさ」に揺れるNTTドコモ。前田新社長が語った改善策と収益改善のカギ ドコモに対しては2023年頃からつながりにくさ・速度低下に関する指摘が継続しているという背景がある。 ドコモは2023年10月には品質改善のための300億円規模の投資を発表している。前田氏は「ネガティブな声は減ってきている」とするが、前田氏のプレゼンや報道陣との質疑応答のほとんどは回線品質問題への言及になるなど、問題はまだ完全に解決できていないことがうかがえる。
通信品質を2024年度中に4位から1位へ
前田氏の社長就任は5月10日のドコモの決算会見で公表された。その際も前田氏は通信品質の改善について言及しており、今回の会見では以下のような具体策を解説した形だ。 Sub6(ドコモでは3.7GHz帯と4.5GHz帯それぞれ100MHz幅で利用)の周波数帯を使った5Gエリア展開を引き続き全国で広げる。 「MU-MIMO」(マルチユーザーマイモ)などの高速化技術を導入していく。 特にトラフィックの集中する東名阪や福岡などでは積極的にSub6のエリアを広げていく。 SNSでのユーザーボイスやアプリの利用データから改善が必要場所を早期に検知する。 とはいえ、これらの施策はすでに何からの形で発表、また他社が先行して取り組んでいる要素も多く、目新しさはない。 前田氏は18日の会見で、現時点での課題感の質問に対し「(2023年頃と比べて)品質は低下していると思っているわけではない」という現状認識を示しつつも、「(通信品質低下は)全社員にとっての最重要課題」であると発言し、引き続き地道な改善を続けていく方針を示している。 また、会見では1つ具体的な目標も示した。 それは調査機関・Opensignal(オープンシグナル)による「モバイルネットワーク体験の評価指標・『一貫した品質』部門で2024年度末までにNo.1を目指す」というものだ。 この一貫した品質(Consistent Quality)について、オープンシグナルは「一般的なアプリケーション要件をサポートするため、ネットワーク上でのユーザー・エクスペリエンスがどれほど十分であったか測定します」としており、回線の全体的な評価を示している。 直近に公開されたレポート(データ収集期間:2023年12月1日~2024年2月28日)によると、一貫した品質部門でのドコモのスコアは82.1ポイントと、4キャリア中最下位。1位は2年連続でソフトバンク(84.3ポイント)となっている。 ランキング全体を見ると、最も後発の楽天モバイルが2位(83.4ポイント)になるなど、各社の品質に関する競争は激化しており、ドコモの掲げる「2024年度末までにNo.1」は比較的難易度の高い目標にも見える。
小林 優多郎