16歳の娘はなぜ亡くなったのか 「どうしてこんなことに…」壮絶な最期を追い、トー横にたどり着いた父
●トー横で出会った彼と1年も経たずに
「どうしてこんなことになったんだろうか。何が何だかわからない」 16年で人生の幕を閉じた娘の足跡を知りたいと、あきこさんの友だちに会いに行くと、「トー横キッズだった」と教えられた。亡くなった彼氏とはトー横で出会ったという。
飛び降りた衝撃で画面がひび割れたあきこさんのスマホを復元すると、生前に友人らとやり取りしたメッセージやSNSの投稿など詳しい経緯が明らかになってきた。 浩三さんによると、あきこさんは2022年5月中旬にトー横に行くようになり、5月下旬に3歳年上の男性と付き合うようになった。
6月から8月ごろはトー横近くのホテルで生活しており、この頃からトー横界隈の大人たちと知り合い、薬物の売買を指示されるなどするようになったという。 9月ごろからは友だちの家に住むようになり、トー横に入り浸っていた。 スマホやSNSにはトー横で撮影されたあきこさんの写真や動画が多く残されている。
そこには、「地雷系」と呼ばれる独特なファッションに身を包んだ娘の姿があった。 浩三さんは「私が知っているあきことは全然違っていた。違いすぎて信じられない」と振り返る。
●娘の居場所をなくした親として償い
トー横をめぐる問題はこれまでニュースなどで見聞きしたことはあった。「子どもには行ってほしくないな」と思っていたが、どこかひとごとのような感じだった。
娘の死後、浩三さんは一度も行ったことがなかったトー横に何度も足を運び、あきこさんに関する情報を得ようとそこに集まる若者に話しかけるようになった。 東京都議会の議員とも意見交換し、トー横に代わる子どもの居場所を作る必要性などを訴えている。 東京都は2024年度、トー横に集まる子どもたちを支援するため、相談窓口の設置や啓発活動の予算として2億円を計上した。
「家に娘の居場所をなくしてしまった親の責任として一種の償いです」 今も自責の念にかられているという浩三さん。娘と同じような最期を迎える子どもを減らすために活動していきたいと考えている。 「トー横のせいにするつもりは全くありません。許せないのはトー横に来る子たちを利用して薬物を売買させたり性欲のはけ口にしたりする悪い大人たちがいること。彼らをシャットアウトしたい。できることは必ずあるはずで、行政などを巻き込んでいくしかないと思っています」