逆転の発想で生まれた「はかないくつした」、ずれて脱げるなら「かかとの部分をなくせばいい」 老舗メーカーが開発したヒット商品
スニーカーやミュールをおしゃれに履きたいときに重宝するフットカバー。足先やかかとを覆う靴下の一種で、素足で靴を履いているように演出できるのが特徴だ。だが、歩いているうちにかかとからずれて脱げてしまい、信号待ちの間に履き直す。そんな経験がある人は多いのではないだろうか。 創業から100年を超える靴下メーカー、ナイガイの遠藤裕治さん(55)は脱げるストレスをなくすために「いっそのことかかとの部分をなくしてしまえばいいのではないか」と考えた。そんな逆転の発想で開発したのが、商品名もそのままの「はかないくつした」。見た目は靴の中敷きにそっくりだが、あくまでも「靴下」だ。老舗が持つものづくりのノウハウをつぎ込み、汗をかいてもにおいにくく、さらっとした履き心地を実現。全国の百貨店やドラッグストア計約1600店に販路を拡大した。ヒットの理由を追った。(共同通信=小林まりえ) ▽クールビズ浸透で丈の短い靴下がトレンドに
はかないくつしたは縦25センチ、幅7・5センチで足底の部分だけの靴下だ。靴の大きさに合わせてはさみで切り、中敷きのように靴の中に入れてはだしで履く。編み地の表面は凹凸を持たせる工夫によって足の裏と接する割合を減らし、汗をかいても快適に過ごせるようにした。抗菌加工でにおいにくいのも売りだ。裏面には樹脂を施しており、それが靴にしっかりとくっつくためずれにくく、歩行時などの衝撃も吸収するという。最大の特徴は、一般的な靴下の素材と同じ綿とナイロンを使用しているため、洗濯して繰り返し使えることだ。 遠藤さんによると、靴下は10年ほど前から丈が短いのがトレンドになっている。背景にあるのがクールビズの浸透だ。革靴ではなくスニーカーを履いて通勤する人が増えた。スーツのズボンのすそから靴下が中途半端に見えてしまうとバランスが悪い。このため、スニーカーに隠れるような短い丈の靴下が好まれるようになった。その代表格がフットカバーだ。