「部活も合宿や遠征は行けず…」習い事は“贅沢”なのか? 貧困家庭の子どもが語る「体験格差」のリアル
部活に入っても、合同練習は遠征は行けない
──部活には入っていましたか。 中学では部活もしてなかったです。中3ぐらいまでは喘息で体育もほとんど参加できないくらいで。年に3回参加できたらいいかな。それ以外は休んでました。 高校生になって、吹奏楽部に入ったというか、ピアノ弾いてただけなんですけど。結局お金がかけられないので、別の学校と合同練習したりとか、コンサートとか、どこかに遠征に行くというのは、僕は行けない。そもそも吹奏楽では、ピアノは目立つ仕事ではなくて。 楽器は高くて買えないので、学校にあるピアノで。無料でできるようなところしかやってないです。トランペットとかもやってみたかったですけどね。それこそクラシックが好きだったので、オーケストラにある楽器は全部好きですし。 陸上部にも籍を置いて短距離をやってました。これも、試合に出るとかはしないで練習だけですけど。あとは、部員がいないところから何人か集めて科学部の部長をやってました。興味は広いんだと思います。一つでは飽き足らないというか。 ──お金の制約が大きくある中で、色々やってみたいことをやってきたんですね。弟さんや妹さんはどうでしたか。 自分と違って、二人ともあまり欲みたいなものを持たないですね。お兄ちゃんが「あれがほしい」「これがしたい」と言って親と喧嘩してるのを見て何も言わなくなったのかもしれないです。僕が勝手にそう思ってるだけですけど。 ──その後、大人になって、働くようになって。 今も余裕はないんですけど、5人家族の家計の半分くらいは僕が支えています。僕が20歳くらいのときに、家族全員で生活保護もやめました。車も今はあります。 人生で最初の大きな買い物は、成人してから買ったピアノですかね。電子ピアノなんですけど、グランドピアノに近い音質を出せるやつで。やっと買うことができて。 高校生のときより腕は落ちてますけど、毎日仕事に行く前に弾くようにしています。
今井悠介