「niko and ...」カフェ事業が“実は絶好調”のワケ。細やかなサービスで差別化し、売上高が前年比130%にまで成長、アパレルへの好影響も
■地域の色に馴染む店舗 また、ニコアンドコーヒーの強みは、場所ごとに、地域の色に染まる店舗が生まれていることにもある。 通常、チェーン店の出店では「ドミナント戦略」を取ることが多い。特定のエリアに集中出店し、コストを下げることなどを通じて、その地域での競争優位性を獲得する戦略だ。日本のカフェチェーンでは、スターバックスが日本上陸期に、首都圏に集中出店し、ブランディングにもつなげたことで知られている。
一方、ニコアンドコーヒーは現在18店舗あるうち、東京は前述した二子玉川ライズ店と、神宮前にある旗艦店「niko and ... COFFEE TOKYO」の2店のみ。その他は全国に点在しており、その店ごとに、独特の色を持つことに繋がっている。 「近鉄西大寺駅の近くの『ならファミリー』という商業施設に、店舗があります。他の多くと同じく、カフェ併設店舗なのですが、平日に行くと『ここは町の喫茶店かな?』と思うほどに、60~70代ぐらいのお客様が多いんです。僕たちも想定していなかった、コミュニティの場になっているようです」(増田氏)
ニコアンドコーヒーのもう一つの特徴は、店舗によって、雰囲気がかなり違うこと。例えば、2号店である原宿店は、若い人やインバウンドの人が多いし、二子玉川ライズ店であれば家族連れが多い。それぞれの立地に、うまく馴染んでいる印象を受ける。 ■出店の中心はショッピングモール、フードコート近くがベスト また、出店の中で多いのが、ショッピングモールだ。ここでも、ニコアンドコーヒーは、独特の勝ち筋を見出した。 「フードコートの近くに出店したほうが、売り上げとしては高いんです。
ショッピングモールの中では、買い物をするマインドと、休憩をするマインドでお客様の気持ちは変わる。フードコートに行くときは『くつろぎたい』と思うはず。 そこに我々のカフェがあると、特別感を持ってくつろげると思っていただける部分があるのでしょう」(増田氏) アパレルが本業ではあるものの、カフェも考慮して出店を考える。消費者の行動を深く観察したからこそ、最適解が見えてきたわけだ。 しかし、そんな「ニコアンドコーヒー」も、スタートからしばらくは、赤字が続いたという。18日公開の後編では、「『niko and ...』カフェ事業が人気急上昇の必然 苦節10年で黒字に転換 、平日でも活況に」と題し、昨今のカフェ需要の波に乗るまでの、苦闘の日々を語ってもらった。
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谷頭 和希 :チェーンストア研究家・ライター