山田孝之、仲野太賀ダブル主演映画「十一人の賊軍」で僧侶になった千原せいじが女犯重ねた僧侶役
山田孝之(40)と仲野太賀(31)がダブル主演する映画「十一人の賊軍」(白石和彌監督、11月1日公開)に、玉木宏(44)阿部サダヲ(54)らが出演することが4日、分かった。また5月に天台宗の僧侶になったことで話題を呼んだ千原せいじ(54)が、数多くの女犯により死罪を言い渡される僧侶を演じる。北米、ドイツ語圏での配給も決まった。 「十一人の賊軍」は、明治維新の最中の1868年(明元)に勃発した戊辰戦争の際に、新発田藩(現・新潟県新発田市)で起きた奥羽越列藩同盟(旧幕府軍)軍への裏切りのエピソードを描く。山田は劇中で、女房を寝取られた怒りから新発田藩士を殺害した駕籠屋の政を演じる。とりでを守り抜けば無罪放免の条件で、決死隊として戦場に駆り出された罪人だ。 一筋縄ではいかない罪人集団には、山田の他にも個性的な俳優陣がそろった。武士から金を巻き上げたイカサマ博徒の赤丹を尾上右近(32)、自分を捨てた男の家に火をつけた女郎なつを鞘師里保(26)、花火師の息子ノロを佐久本宝(25)僧侶の引導を千原が演じる。また、おろしや(ロシア)へ密航を試みた医師の倅おろしやを岡山天音(29)一家心中を試みるも自分だけ死ねずお縄になった農民・三途を松浦祐也(43)侍の女房と恋仲になり死罪になった新発田の色男・二枚目を一ノ瀬颯(27)つじ斬りで複数人を殺害した浪人・辻斬を小柳亮太(30)長州出身の剣術家で、新発田で強盗殺人をはたらいた爺っつぁんを本山力(54)が演じる。 仲野は、新発田の地を守るため罪人たちと共に戦場に身を置く剣術道場の道場主・鷲尾兵士郎を演じる。新発田藩藩士・仙石善右エ門を音尾琢真(48)、藩の実権を掌握する新発田藩城代家老・溝口内匠を阿部、内匠の腹心で娘婿の決死隊隊長・入江数馬を野村周平(30)元官軍先鋒総督府・参謀の山縣狂介を玉木が演じる。 また、英題が「11REBELS」に決まり北米と、ドイツ、リヒテンシュタイン、オーストリア、スイス、ルクセンブルク、ボルツァーノ自治県といったドイツ語圏での配給も決まった。俳優陣とともに、菩薩(ぼさつ)と守る龍の入れ墨が大きく彫られた山田の背中が前面に描かれたビジュアルと、山田が「外道ども」と言い放つなどした、初の本編映像も解禁となった。 さらに、東映黄金期の礎を築いた脚本家の笠原和夫さんが1964年(昭39)に執筆も、映画化に至らなかった幻のプロット(あらすじ)が元になった小説版が、講談社から刊行されることも決定。「天地明察」「十二人の死にたい子どもたち」などで知られる、作家の冲方丁氏が執筆し、7月12日に発売。 ◆「十一人の賊軍」「日本侠客伝」(64年)「仁義なき戦い」(73年)両シリーズを手がけた笠原さんが、藩に捕らえられた11人の罪人がとりでを守る「決死隊」の任に就き、憎き藩のために命をかけることへの葛藤を描く脚本を執筆。「勝てば官軍、負ければ賊軍」と勝敗によって善悪が決まるのが当たり前の時代に、果たして勝つことだけが正義なのか? と一石を投じるべく構想した。ただ、後に東映の社長、会長、名誉会長を歴任し“映画界のドン”と呼ばれた、当時の東映京都撮影所の岡田茂所長から、全員が討ち死にして負けるという、物語の結末が気に入らないとボツにされた。笠原さんは怒り狂い、350枚枚ものシナリオを破り捨て日の目を見ることはなくなったが、プロットだけは残り、出版等がなされたものを、白石和彌監督(49)が発見。18年「孤狼の血」と21年「孤狼の血 LEVEL2」でタッグを組んだ、紀伊宗之プロデューサーとタッグを組んで企画し、脚本の池上純哉氏をはじめ「仁義なき戦い」の系譜を継ぐ「孤狼の血」チームが受け継ぎ、60年の時を超えて映画化。山田は13年の主演映画「凶悪」以来11年ぶり、仲野は初の同監督とのタッグで、殺陣にも初挑戦。同事務所所属の2人の共演は18年の映画「50回目のファーストキス」以来6年ぶり。撮影は23年8月~11月まで行われた。 ◆笠原和夫(かさはら・かずお)1927年(昭2)5月8日、東京都生まれ。新潟県長岡中学を卒業後、海軍特別幹部練習生となり復員後、さまざまな職につき54年に東映宣伝部に常勤嘱託として採用。2年後に社内シナリオコンクールで1位入選後、プロの脚本家として執筆を始める。64年スタートの「日本侠客伝」シリーズで11作中8作の脚本を担当。68年「博奕打ち 総長賭博」が三島由紀夫さんに激賞され、73年から始まった「仁義なき戦い」シリーズの脚本が高く評価。76年に東映を退社しフリーの脚本家に。80年「二百三高地」、82年「大日本帝国」で日本アカデミー賞優秀脚本賞。98年に勲四等瑞宝章受章。02年12月12日に肺炎のため76歳で死去。