原料・人件費上昇、コロナ対策融資の返済…あえぐ中小企業 倒産増える 2024年度上半期 中国地方では過去10年で最多
中国地方で企業の倒産が増えている。原材料費や人件費の上昇、新型コロナウイルス対策融資の返済の本格化などが経営を圧迫し、2024年度上半期(4~9月)は過去10年で最多だった。地場金融機関などがファンドを設け、再生を支援する動きも出ているが、経営改善に悩む中小企業は多い。 【グラフ】4~9月の中国地方の企業倒産 「味はどこにも負けない自信があったが、大手との競争を含めた経営環境の変化に対応できなかった」。1月に事業停止し、破産手続きを申請したパン製造販売のオギロパン(広島県三原市)。4代目社長だった荻路新吾さん(51)は唇をかむ。昨年末に社員7人とパート14人を解雇した。 1918年創業。砂糖のつぶつぶ感が特徴のしゃりしゃりパンなどで親しまれた。だが、コロナ禍による売り上げ低迷に加え、最近の原材料費の高騰が直撃。バターなどの油脂類や卵などの材料費が2年間で3割近く上がった。昨年6月にパンを1割値上げしたが、販売数が減り、光熱費や輸送費、人件費などの上昇も負担になった。95年に3億6千万円あった売上高はここ数年、1億円前後に落ち込み、赤字が続いていた。 東京商工リサーチ広島支社によると、2024年度上半期の中国地方の企業倒産(負債1千万円以上)は249件と前年同期を59件上回り、過去10年で最も多かった。4月に残業規制が適用された建設業や運輸業などで、人手不足を一因とする倒産も目立った。 倒産企業を資本金別に見ると、1千万円未満が186件と74・7%を占め、1億円以上は1件だけ。前年同期からの増加割合は31・1%と、全国平均の17・8%を13・3ポイント上回った。地方の比較的小さな事業者が、より深刻な影響を受けていることがうかがえる。 コロナ禍から経済活動が回復し、事業が順調でも、借り入れが重荷になっている中小企業は少なくない。企業倒産が増えれば、雇用や企業の持つ技術が失われかねない。 地場金融機関や中小企業基盤整備機構は1月、経営が悪化した中小企業を支援するため、出資総額30億円のファンドを設立した。ファンドが債権を買い取り、ひろぎんホールディングス(中区)傘下のしまなみ債権回収(同)が管理する。 同社によると、これまで複数の事業者の支援に乗り出しているという。三好正洋企業管理副本部長は「事業者に寄り添いながら、技術力など強みに磨きをかけるような支援をしたい」と語る。 今回の衆院選で、各党は中小企業の価格転嫁や賃上げを支援する公約を掲げている。苦境を打開しようとする中小事業者をどう後押しするのか。資金繰り支援にとどまらず、経営改善に向けて、きめ細かいサポートが求められている。
中国新聞社