（写真：福島民報）

　大熊町のベンチャー企業「ＯＫＵＭＡＤＲＯＮＥ」（オオクマドローン）は、東北地方の大学などと連携して独自技術を取り入れた小型水素燃料電池と水素を燃料とする小型発電機の製造法を確立、町内に工場を設けて２０２７（令和９）年から国内外に販売する。同社によると国産での量産化は初めてとなる。ドローンやロボット、災害時の非常用電源など幅広く活用でき、温室効果ガスの排出量削減や東日本大震災からの復興推進を後押しする。 　既製の水素燃料電池に使われているレアメタルやプラチナなどに代わる素材を用いるのが特徴。発電機は化石燃料に比べて静かで排ガスも出ない。国内で調達できる材料で製造し、価格を抑えて販売するために研究を継続している。活用が期待される分野は【図】の通り。 　工場は町内に整備された産業団地に建設する方向で検討している。２０２６年に着工し、整備費は１０億円程度を見込む。操業当初は１０～２０人程度の雇用を想定しており、事業が軌道に乗れば増産も視野に入れる。

　同社は小型の水素燃料電池を電源としたドローンの開発に取り組んできた。小型水素燃料電池は現在、海外のみで製造され、調達にかかる時間や価格の高さが課題になっていた。自社生産することで国内外の関連企業の需要にも応える。県の地域復興実用化開発等促進事業費補助金に採択され、今年度から２年間で約４億円の補助を受ける。 　同社は水素も自前で作る計画。電池などの開発と並行して小規模利用が可能な水素供給の技術体制を構築する。太陽光発電の余剰電力を活用した水素の生産・供給体制の構築を目指す。関連企業・団体と連携し、普及に向け販路を開拓していく考えだ。 　福島大共生システム理工学類付属水素エネルギー総合研究所の宗像鉄雄所長は「（水素燃料電池の普及には）材料をどれだけ安価にできるかが課題になっている」とし、「実現できれば意義深い」と指摘する。 　李顕一社長は「大熊の地から持続可能な『小さな水素社会』を実現したい」と話している。