「女性半額キャンペーン」は“男性差別”なのか…専門家は「外食産業の限定サービスはむしろ普通のこと。今後も“価格の多様化”は進む」と断言
男性向けのキャンペーンも実施
「『ダイナミック・プライシング』という専門用語があります。消費者の需要と供給を考慮し、商品やサービスの価格を変動させることを指します。私たちにとって最もなじみ深いものの1つがホテルの宿泊費や航空券の価格でしょう。ホテルや航空会社は毎日、常に同じサービスを提供していますが、利用者の少ない閑散期は安く、逆の繁忙期は高い価格です。経済学には『一物一価の法則』という概念がありますが、外食産業は同じ商品でも期間限定のキャンペーンで割引するなど、価格を変えることが珍しくありません」(同・千葉氏) 千葉氏によると、外食産業にはエンタメ産業と類似した点があり、これが「女性専用プラン」や「女性向けキャンペーン」に大きな影響を与えているという。 「外食産業もエンタメ産業も非日常的で、遊び心に根ざした“イベント”を提供し、世間の耳目を集める必要があります。そのターゲットは多岐にわたり、男性客を意識したサービスやキャンペーンも行われています。例えば女性より男性のほうが食べる量が多いというデータがありますから、『食べ放題』や『ライスお代わり自由』といったサービスや、期間限定の『メガ盛り・爆盛りメニュー』といったキャンペー-ンは男性客への訴求を狙って行われるわけです」(同・千葉氏) ある時期は高齢者を意識したキャンペーンを、別の時期はファミリー層が歓迎するキャンペーンを行う……。キャンペーンのターゲットが固定化されることはなく、様々な機会を捉えて様々な層に働きかけるのがセオリーだ。
価格設定はさらに多様化
「新型コロナウイルス特別措置法に基づき、東京都は2021年、飲食店に対して時短営業を要請しました。このため営業被害を受けたとして『グローバルダイニング』は賠償を求めて都を提訴。2022年に東京地裁は時短命令が『違法』と認定し、地裁判決は後に確定しました。つまり外食産業では『コロナ禍でも深夜営業を続け、アルコールを提供したい』と主張すれば一定の人々から支持を受け、その店の人気や評価が上昇することさえあるのです。価格の問題も同じで、外食産業における価格設定は、会社や店主など供給側に高い自由度を認めるべきでしょう」(同・千葉氏) 女性限定サービスが嫌なら、その店には二度と行かなければいい。外食産業の各社が様々な層をターゲットにキャンペーンを展開し、男性もメリットを得ていることを考えれば、少なくとも「男性差別」という指摘は的外れ──ということになる。 「これからの外食産業で価格設定はさらに多様性を増すはずです。例えば飲食店でも“ファストパス”の導入が増えてきました。行列ができるような人気店で、追加の手数料を払えば並ばずに入店できるというサービスです。こうしたサービスは他にも応用が可能で、例えば窓際で眺めのいい席は料金を高くするという価格設定も考えられるでしょう。同じ店で同じ料理を食べても、色々な料金体系で価格は変動する。こうした多様性のある価格設定が日常のものになれば、女性限定の割引サービスを実施して『男性差別』と指摘されることは少なくなっていくのではないでしょうか」(同・千葉氏)
デイリー新潮編集部
新潮社