新型BMW1シリーズは、見た目も走りも“シュッ”とだからイイ! 日本にピッタリな最新ドイツ車に迫る
フルモデルチェンジしたBMW「1シリーズ」は、コンパクトカーとは思えぬ上質な走りが特徴だった! サトータケシがリポートする。 【写真を見る】新型120の実用性をチェック(62枚)
巧みなデザイン処理
第4世代となる新型BMW1シリーズが発表された。 2019年に第3世代が登場したときには、それまでのFR(後輪駆動)からFF(前輪駆動)に駆動方式が変更されたことが話題になった。FFを踏襲した第4世代と対面してのファーストインプレッションは、「シュッとしたなぁ」というもの。従来型はずんぐりむっくりとした印象で、幼い柴犬のようなフォルムは愛嬌があったけれど、BMWらしいかといえば「?」が付いた。 一方、新型はシャープな造形になったフロントグリルとヘッドランプ、彫りの深いキャラクターライン、マッシブなリアビューなどで、全体に精悍な佇まいになっている。 従来型に比べて、ロングノーズに見えることも“シュッとした”という印象につながる。ただし全長は35mm長くなっているだけだから、ノーズが長いと感じるのは巧みなデザイン処理による錯覚もあるのだろう。なお、2670mmのホイールベースは従来型と変わらない。 新型1シリーズのパワートレインのラインナップは、排気量1.5リッターの直列3気筒エンジンと48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたものと、2.0リッターの直列4気筒ターボエンジンの2種。前者は冒頭に記したとおりにFFであるけれど、後者は4輪駆動となる。今回の試乗車は、1.5リッター直3のBMW120だ。 最近のBMWの流儀に則り、メーターパネルとセンターディスプレイを一体化したカーブドディスプレイを中心にしたインテリアも、エクステリアと同様にモダンで洗練されたという印象を受ける。
BMWらしい乗り味
センターコンソールに位置するスターターボタンを押してシステム起動、同じくセンターコンソールあるシフトセレクターをDレンジに入れて発進する。極低回転域はモーターが適切にアシストしており、発進加速はすこぶるスムーズ。「パタパタ」とか「ポコポコ」といったかつての3気筒で感じた安っぽさは皆無で、シームレスに速度を積み上げる。 7段ATとの連携もばっちりで、加速したいときに強めにアクセルペダルを踏み込むと、”そうくると思って準備していましたよ“と、ばかりに、素早くシフトダウンしてくれる。トランスミッションには、気の利く執事がいるようだ。最高出力170psだから飛び抜けて速い高性能パワートレインではないけれど、キモチよく走ってくれる好性能パワートレインだ。 パワートレイン以上に感銘を受けたのが、懐の深い乗り心地だ。 FFに移行した従来型は、5年間のモデルライフで次第に乗り心地が快適になっていったと記憶している。新型は、そこからさらにひとつステージが上がったように感じる。舗装の荒れた箇所や首都高速の路面のつなぎ目を突破しても余裕をもってショックを受け止め、衝撃を軽くてマイルドなものに変換してから乗員に伝えてくれる。 一方で、コーナーで攻め込んだときに素直にノーズの向きを変えてくれるあたりは、いかにもBMWらしい振る舞いだ。ステアリングフィールも上々で、いまタイヤがどんな状態で路面と接しているのかが、くっきりと伝わってくる。このあたりもBMWらしい。 クルマおたくとしては、どうしても「FFガー」とか「FRダー」とか言いたくなるけれど、駆動方式はどうあれ、BMWが理想としているドライブフィールは一貫しているのだと感じた。FFとFRでは選ぶルートが異なるかもしれないけれど、目指す頂上は同じだ。 ストップ&コ゚―機能付きのアクティブクルーズコントロールや、ペダル踏み間違い急発進抑制機能といった運転支援機能は標準装備。今回は条件が合わなかったので試すことができなかったけれど、ハンズオフ機能付きの渋滞運転支援機能も備わる。 ドライブフィールからはBMWの美点がはっきりと感じられるし、装備も充実している。加えて、カッコもよくなった。 つまり、1シリーズは見事に正常進化を果たしている。たとえば、これまで「3シリーズ」や「5シリーズ」でBMWをエンジョイなさった方がダウンサイジングしてこのクルマに乗り換えても、寂しい思いをすることはないはずだ。 反対に、初めてBMWに乗る方には、このブランドの美点と“らしさ”を、きっちり伝えるクルマに仕上がっている。
文・サトータケシ 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)