青森山田vs近江、勝負のポイントは立ち上がりの試合運び 決勝見どころ
常勝軍団・青森山田が2大会ぶり4度目の優勝を果たすのか。それとも初優勝を目指す新鋭校・近江が頂点に立つのか。102回目の高校サッカー選手権は1月8日に決勝戦が行われる。舞台は国立競技場。幾度の名勝負を生んできた“聖地”でどのような戦いが繰り広げられるのか。 【フォトギャラリー】市立船橋vs青森山田、近江vs堀越試合風景 今年度のU-18高円宮杯プレミアリーグで年間王者に輝いた青森山田は他を寄せ付けない強さを誇示し、順当にファイナルまで勝ち上がってきた。初戦となった2回戦は飯塚に苦戦し、土壇場で追い付いてPK戦で勝利を拾ったが、以降は磐石の試合運びでライバル校を撃破してきた。広島国際学院との3回戦は7-0で快勝。続く準々決勝の昌平戦はセットプレーを軸に攻め立て、前半20分までに3ゴールを挙げた。終わってみれば4-0の完勝。同じプレミアリーグEASTに籍を置く難敵を難なく下し、準決勝に進出した。そして、迎えた6日の準決勝。昌平に続いて同じカテゴリーに所属する市立船橋と対戦すると、11分に芝田玲(3年)の左CKから190cmの大型CB小泉佳絃が高打点のヘッドで先制点をねじ込む。以降は堅実な守備で前進を許さず、無失点でハーフタイムを迎えた。後半は相手の反撃に遭い、最終盤に失点。それでも、PK戦では「絶対の信頼を置いている」と正木昌宣監督が賛辞を惜しまない守護神・鈴木将永の活躍で、2大会ぶりに準決勝を突破した。 対する近江は攻撃的なスタイルを貫き、一戦毎に自信を深めて初の決勝進出を果たした。青森山田と同じく2回戦からの登場となったなか、初戦で今夏のインターハイで4強入りを果たした日大藤沢をPK戦で撃破。3回戦で同優勝の明秀日立をPK戦で下し、準々決勝では神村学園に2度のリードを許しながら土壇場で試合をひっくり返して国立行きの切符を手にした。セミファイナルでは序盤から攻勢を強め、22分まで3ゴールを奪取。相手の反撃も最終盤の1点に止め、見事な試合運びで初優勝に王手をかけた。CBを主戦場とし、準決勝では3-4-2-1の左ウイングバックで先発した主将の金山耀太(3年)は推進力があり、いわゆる運べるタイプのプレーヤー。脇を固めるMF山門立侑(3年)や右ウイングバックの鵜戸瑛士(3年)も局面を打開する力があり、侮れない。選手の性格も物怖じしないタイプが揃っており、勢いに乗った時は手が付けられない。大観衆の声援がプラスになっており、青森山田であっても簡単には止められないだろう。 見どころが多いファイナルにおいて、勝負のポイントを上げるのであれば、立ち上がりの試合運びだろう。「3バックですごく攻撃的にくる。いろんな形で戦ってくる相手なので、変に意識をし過ぎずにいつも通りのプレーをしたい」と青森山田の主将・山本虎(3年)が明かした通り、攻撃の振る舞い方は今までにない形だ。次々にボールを運んでくるだけに、スペースを与えると押し込まれる可能性はある。そこで青森山田は全体の距離感をいかにコンパクトにできるか。そして、高い位置からプレッシャーをかけられるか。特に開始15分あたりで積極的にプレッシャーをかけ、出鼻を挫ければ相手の士気は下がるはず。圧に屈した状況からセットプレーで得点を重ねられれば、間違いなく試合は優位に運べる。逆に近江は自分たちの間合いに持っていきたいところ。中盤の攻防で先手を取り、早い段階でゴールを決められれば、相手にダメージを与えられる。そうすれば、青森山田は前のめりになるはずで、逆に背後のスペースを使って2点目を取りやすくなるはずだ。 試合前日の7日、青森山田は報道陣に練習を公開し、リラックスした表情を見せていた。1時間ほどのトレーニングも良い雰囲気でメニューを消化。一方の近江は取材対応をした一方でトレーニングは完全非公開となったが、チャレンジャーとして失うものはない。泣いても笑ってもあと1試合。運命のキックオフは8日の14時5分だ。 (文・写真=松尾祐希)