〝世界一監督〟栗山英樹氏が自ら語った「黒歴史」とは? そして「宿命」とは?
【球界ここだけの話】昨春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で侍ジャパンを世界一に導いた栗山英樹氏(63)の威光は絶大で、今夏に入っても企業、大学を中心に講演の依頼が後を絶たない。 【写真】侍ジャパンを率いていた栗山氏が思い出していた野村克也氏の〝遺言〟 そんな元指揮官が自ら「黒歴史」と告白するのが、「土曜元気市」(1997―98年)、「新・男の食彩」(2000―02年)と続いたNHK料理番組への出演歴だ。当時はまだ料理の知識を十分に持ち合わせていなかったことで苦労もあったようだが、「今は野球より料理」と胸を張るほどの腕前。プロフィルの趣味の欄にも、堂々と「料理」と記されている。得意料理は中華丼、白菜鍋「扁炉(ピェンロー)」で、報道陣にも何度も振る舞っているという。 現在は日本ハムで「チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)」の肩書を持つ同氏は、今季から2軍に茶髪などの「染髪禁止令」を出した。「〝時代錯誤〟とか、結構な批判をいただきまして…(苦笑)。1軍の選手は自分で飯食えているからいいとしても、ファームでお金を払って(ファンに)見てもらうのに、見た目が不快だと思われるのはよくない」と説明した。同氏は自著『信じ切る力』(講談社)でも名将・水原茂の「人間は弱いから、形が大事」との言葉を引用し、自らも日本ハム監督時代の10年間は移動、遠征先のホテルでは真夏であってもスーツにネクタイを着用していたと明かしている。 ただ、真意はもっと〝先〟にある。「強いチームではなく、世界一愛されるチームにしたい。自分が、自分の子供をこのチームに預けたいと思えるようなチームに」と理想を掲げる。 WBCの優勝で日本中が歓喜に包まれたが、野球が世界的にはマイナースポーツであるという位置付けに変わりはない。野球の競技人口の減少も歯止めが利いていないのが現状だ。 だからこそ、栗山氏は「少年野球、高校野球、プロ野球…。組織が別々になっている。まずは一つになる。自分たちの権利や既得権を主張している時代ではない。そこだけは野球界への恩返しのためにも動かなければならない。実際、動いているんですけど、なかなか難しい」。残りの人生に課せられた大変革の使命。それは換言すれば、〝世界一監督〟の「宿命」なのかもしれない。(東山貴実)