TSMC熊本第1工場が量産開始、第2工場も着工へ 地場企業のサプライチェーン参入なるか
半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が菊陽町に建設した熊本第1工場が、当初の計画通り2024年12月に量産を開始した。国内では最先端となる演算用のロジック半導体を生産し、運営子会社のJASMに出資するソニーグループやデンソーに供給する見込みだ。TSMCは、3月までに第2工場の建設にも着手する計画。半導体産業の集積が進む中、地場企業がサプライチェーン(供給網)に参入できるかが今後のポイントになる。 TSMC関連ニュース
TSMCは21年11月に菊陽町での工場建設を発表。22年4月に建設に着手し23年末には建屋が完成、24年2月に開所式を開いた。回路線幅12~28ナノメートル(ナノは10億分の1)のロジック半導体を生産する。TSMCは24年12月27日に「熊本におけるJASMの第1工場は全てのプロセス認証を完了した後に、12月に計画通りに量産に入った」とのコメントを発表した。 第1工場の東側の隣接地には第2工場を建てることも決まっている。27年末までに稼働予定の第2工場では、さらに性能の高い回路線幅6ナノメートルの製品も生産する計画だ。 熊本県は第3工場の誘致も目指している。また、菊陽町は第1工場の南側の隣接地が半導体関連企業向けの工業団地に適しているか、今年3月までに見極めるとしている。 TSMCの進出が呼び水となり、熊本県内では半導体関連企業の大型投資が相次いでいる。ソニーグループは24年10月、合志市に県内で2カ所目となる画像センサー工場の建設に着手。製造装置メーカーの荏原製作所は12月、南関町に3棟目となる工場棟を完成させた。東京エレクトロンが合志市で建設する開発棟は今夏に完成予定だ。九州経済調査協会(福岡市)は、半導体関連設備投資に伴う21年から30年までの熊本県内への経済波及効果を13兆3890億円としている。
一方、地場企業がTSMCのサプライチェーンに参入するのは容易ではないとの指摘も多い。熊本第1工場は30年までに間接材の国内調達率を60%に高めるとしているが、すでに取引がある企業が中心になるとみられる。サプライチェーン参入を後押しするため、肥後銀行など九州・沖縄・山口の地銀13行は連携して、地場企業の設備投資や台湾企業との協業を後押しする方針。こうした取り組みが実を結ぶのか、勝負の1年になりそうだ。(田上一平)