日向坂46 四期生が現実の東京で躍動、『ゼンブ・オブ・トーキョー』の巧みな“リアル感”
生き生きした様子は“アオハル”そのもの
イケメン同級生とお近づきになりたいといった素朴なものから、人生を賭けた挑戦まで。夢に溢れた彼女たちの生き生きした様子は“アオハル”そのもの。 熊切和嘉監督が事前にメンバーにみっちり取材して脚本を作り上げたため、役とはいえやはりそれぞれの素のキャラクターがちらつく。枡谷がクールビューティーな風を装っていたり、門林がちょっとドジでギャルな高校生になりきっているところ、羽川の裏表のなさなどは見事なあて書きだ。 一方班員とはぐれてしまった池園は、1人で東京めぐりをするうちに班長としての緊張が解けていく。クラスメイトと再会すると、「みんながいない東京は、初めからゼンブじゃなかったんだ」とお互いの絆を確かめる。ここまでの2年間、同期のトップを走ってきた正源司に、もっと肩の力を抜いてもいいんだよとメンバーやファンがエールを送っているかのような構造にも見える。 ほぼ修学旅行中の1日だけの物語だが、バラバラになる前と後で11人の関係がどうなっていくか。叶ったり、叶わなかったりの劇中の彼女たちの「東京でやりたいこと」が、思わぬ変化を巻き起こしていく。 実際に東京各地でロケを行ったため、2024年の東京を記録したノンフィクションの要素も持っている。メンバーが彷徨する新宿駅西口の地下は映画の通り再開発工事中で、よけいに迷宮と化している。地上の小田急百貨店が解体されて、新宿駅西口の空が広くなっているのも今しか見られない光景なのだが、しっかりカメラに収まっている。 外国人で溢れる浅草や、オタクの街となった池袋の様子もリアル感たっぷり。それゆえに映画に登場したどのエリアも聖地巡礼し放題だ。フィクションのようなノンフィクションのような、境界が曖昧なつくりになったのも本作の仕掛けだろう。街中で四期生楽曲『雨が降ったって』が流れるシーンもある。 ラストは修学旅行を経て、彼女たちの高校の卒業式へ。いつか四期生も日向坂46から旅立つ時が来るだろう、ということを想像してしまうが、その時に本作を見返すとまた違う感傷に浸れそうだ。11人のこれからの活躍が、本作に映っているフレッシュな彼女たちをより輝かせてくれることを祈る。
大宮高史