エチオピア外務省を訪ねた奥本氏（右から2人目）とプロジェクトメンバー。写真中央がカッサウ総局長＝9月中旬（奥本氏提供）

　青森県佐井村の地域商社「コメイチ」（奥本太朗代表取締役）が太陽光や蓄発電装置などを活用する海外プロジェクトを本格化させている。将来的に、未電化地域が多く残るエチオピアの医療施設やコーヒー工場に蓄発電装置などを提供し、電力導入を目指す。9月中旬にエチオピアを視察した奥本氏は「自社の知識や技術を伝えることで、未電化地域の課題改善と、雇用創出、経済活性化につなげられれば」と話している。 　同社は7月末、企業の新事業開発や検証のコンサルティングを行う「PoC　TECH」（東京）と共同で、太陽光を活用して電力を自給自足できる蓄発電装置「SAI－KORO（サイコロ）」を開発。佐井村大佐井地区の古民家カネシチ＋（プラス）前に設置し、8月末からサイコロだけで古民家の電力を賄っている。 　奥本氏によると、エチオピアは国土の約4割が、電気を使えない地域という。プロジェクトメンバーとともに視察したエチオピアの工事現場では、つるはしなどの工具を使い人力に頼って作業する様子を確認した。 　現地の外務省と水・エネルギー省も訪問し、蓄発電装置による電力供給の概要などをプレゼンテーション。中東・アジア太平洋諸国を担当する外務省のカッサウ総局長から「実現可能性について調査・検証を検討する」旨の回答が得られたほか、外務副大臣とも面会できた。 　コメイチは村内を中心に生活用品やIT関連機器の販売などを手がけ、2022年12月に持続可能な開発目標（SDGs）の宣言書を策定。昨年4月、30年までの脱炭素化に向け国が選定する「先行地域」に佐井村が選ばれたことを機に、自然エネルギーを活用した未電化地域に貢献できるような事業の考案を重ねた。 　奥本氏は佐井村内で18年秋から6年間、地域おこしを目指す有志団体「日本で最も小さくかわいい漁村づくり推進プロジェクトチーム」のリーダーを務めた。地元を盛り上げる活動を展開する中で出会った人との人脈が、今回のエチオピア訪問につながった。奥本氏は「事業を通じて、世界中の電気を使えない地域に住む人に光を届けたい」と語った。