広島は遠い!? 東京から飛行機に乗ると福岡よりも… その不便さが利用者のプラスに働く面も
空港が遠くて不便―。広島の交通事情でよく聞く不満だ。西に目を向けると、東京を同時に出発しても広島より早く着く福岡というライバル都市がある。距離と所要時間が比例しないアンバランスが、広島に「不便」のイメージが付きまとう一因かもしれない。ただ、専門家によると、その不便さが利用者にとってプラスに働いている面もあるという。 【図解】東京―広島、東京―福岡 飛行機ではどちらが時間がかかる?
■飛行機を降りてから遠い
広島市から車で約50分、三原市の山あいにある広島空港。リムジンバスを待っていた広島市出身の東京の会社経営女性(42)は「取引先にすぐ行きたいのに、広島は飛行機を降りてから遠い。その点、市街地にある福岡は最高ですよね」。 乗り換え案内サイトで調べると、JR東京駅―JR広島駅は飛行機で3時間40分、新幹線で3時間50分程度。ところが、東京駅からJR博多駅へは飛行機で3時間30分程度と、広島より早く着く。直線距離で200キロ短い広島が、時間では福岡に負けてしまう。 その要因は、空港の立地にある。広島空港から広島駅までは47キロ、バスで50分。一方、福岡は博多駅まで地下鉄で3・3キロ、わずか5分だ。 空港アクセス鉄道がないことも、時間的な不利を招いている。空港まで約45キロある札幌市も、距離的には広島とほぼ同じ条件だが、JRが札幌駅まで最短33分で結ぶため格段に便利だ。リムジンバスに頼る広島は、事故による渋滞などで定時性に難があるのも痛い。 中国新聞社が4月に実施した広島県内の社会人109人へのアンケートでは、広島の「イケてない」と思う点として、最多の87人(79・8%)が「空港が遠いなど、県外や海外へのアクセスが不便」を挙げた。そのイメージも影響してか、広島―東京間の旅客シェアは近年、6対4で新幹線が優位に立っている。
■運賃は松山―東京より1万円以上安い
だが、呉高専の神田佑亮教授(交通政策論)は「実は広島空港には良い面もある」と語る。それは東京(羽田)便の実勢運賃の安さだ。大手航空会社なら、日にもよるがほぼ同距離の松山―東京より1万円以上安い。 「広島は空港の立地も影響して新幹線との競合が激しく、それが東京便の実勢運賃を下げる効果をもたらしている」と神田教授。福岡―東京と比べても、大手航空会社なら同様に広島―東京の方が約1万円安い。 さらに、課題のアクセス面も改善しつつある。県によると、2023年3月の国道2号東広島バイパス開通で車が分散し、山陽自動車道経由のリムジンバスは遅延が減ったという。28年完成予定の広島高速5号(東区)が開通すれば空港―広島駅がほぼ信号なしで結ばれ、バスは5~7分の短縮が見込まれる。 「一般道の渋滞に巻き込まれなくなり、定時性が上がるのは大きい」と神田教授。今後は、都市高速の環状線がある福岡や仙台のように広島市中心部の道路網を長期的に整備すれば、「空港が遠い」とのイメージの払拭にもつながると語る。
中国新聞社