狙いすまして逆転2ラン 乱戦にケリつけた作新学院の作戦 センバツ
◇センバツ高校野球第7日(25日)3回戦 ○作新学院(栃木)9―8英明(香川)● 【今大会のホームランを写真特集で】 逆転本塁打を浴びせられた投手に、再逆転本塁打を浴びせた。ヒーローになったのは、作新学院の5番・武藤匠海だった。 作新学院は八回、英明の百々(どど)愛輝に逆転3ランを許した。1点を追う九回、英明のマウンドに外野手の百々が上がった。百々で締めるのは初戦で強打の智弁和歌山を抑えた英明の必勝パターンだ。 しかし、作新学院は九回1死一塁を作り、4打席無安打の武藤が打席に立った。「狙い球を絞ろうと決めた。インコース寄りの甘めに来たら振り抜く」。安打がなかったからこそ、最後になるかもしれない打席の前に割り切れた。 2球目、想定通りに内角直球が甘くきた。「球がつぶれるようにバットに乗っかった」。すぐに逆転2ランを確信して拳を突き上げ、打球は歓声とともに左翼席で弾んだ。試合後も興奮が冷めず、「甲子園の歓声ってこんなにすごいんだと、人生で一番気持ち良かった」と声が弾んだ。 作新学院は相手先発の左腕・寿賀弘都に直球とスライダーでうまくかわされ、六回まで狙い球が絞れず苦しんだ。緩急でのらりくらりとかわされた智弁和歌山と同じ展開にはまりかけた。 だが、七回に6番・東海林智が「(寿賀の)スライダーは想像以上に切れもスピードもあるが、必ず初球が打ちやすいコースに来る」と読み、初球を中前打にして流れを変えた。この回に生まれた連続適時打も「初球」をたたいたものだった。 八回途中で寿賀を降板させ、2番手の下村健太郎には4安打を浴びせた。八回は4得点。各打者が狙い球を絞ることで、英明の継投策を打ち破った。 小針崇宏監督は初戦でベンチ入り18人のうち17人を使い、今回は18人全員を起用した。英明の捕手・中浦浩志朗の言葉がグラウンドの雰囲気を物語る。「選手がたくさん代わってきて、だんだん何を投げていいのかわからず、パニックになってしまった」。混乱に陥った相手に対し、作新学院は狙いを持って戦ったことで激闘を制した。【浅妻博之】