有明海ノリ全量出荷、佐賀県有明海漁協に排除措置命令 熊本県漁連も 公正取引委員会「独禁法に違反」 両団体、取り消し求め提訴へ
有明海の養殖ノリの全量出荷を組合員に不当に求めたとして、公正取引委員会は15日、独禁法違反で佐賀県有明海漁協(佐賀市)に対して再発防止を求める排除措置命令を出した。水産業の協同組合と生産者の取引に関し、排除措置命令が出されるのは全国で初めて。熊本県漁連(熊本市)にも同様に命令を出した。両団体側は今後、命令の取り消しを求めて提訴する方針を示した。 公取委は佐賀県有明海漁協に関し、生産者に全量出荷を求める誓約書を提出させたり、入札で応札がなかったノリを生産者に返却しなかったりするなどして、生産者の全量出荷以外での販売を妨げているのを「拘束条件付き取引」に該当する独禁法の違反行為と認定した。 また、同漁協の入札の参加商社に生産者から直接ノリを買い付けることを禁じる覚書を取り交わすよう要請していたことや、商社にも応札がなかったノリの同漁協での処分を確認していたことを違反行為の実効性を高める行為と判断した。 排除措置命令書によると、同漁協は遅くとも2018年10月以降、管内の生産者に「全量組合に出荷する」または「全量組合に出荷するよう努める」との内容の誓約書を提出させていた。18~20年度は、誓約書を提出しない場合に共同販売(共販)の入札の出品を拒否することも組合長名の文書に記載していた。応札がなかったノリは、価格の維持安定や品質向上確保を目的に同漁協に処分を一任させていた。 排除措置命令では、同漁協に対して違反行為を取りやめ、また商社に生産者からの直接の買い付けを制限しないことなどを理事会で決議するよう求めた。命令に違反した場合、裁判で確定する前は50万円以下の過料が科される。 公取委は22年6月、佐賀、福岡、熊本3県の漁連や漁協を立ち入り検査した。このうち福岡有明海漁連(福岡県柳川市)は誓約書の廃止などを盛り込んだ改善計画を提出し、公取委は23年6月に計画を認定した。佐賀県有明海漁協と熊本県漁連は「全量出荷を強制していない」と主張。両団体は命令の差し止めを求めて提訴したが、東京地裁は9日の判決で訴えを却下した。 佐賀県有明海漁協と熊本県漁連は代理人弁護士を通じ「事情聴取で取り組みを説明したが、内容を記録するはずの供述調書は作成してもらえなかった。今後は命令の取り消しを求める裁判を起こし、独禁法に違反していないことを説明していく」などのコメントを出した。(大橋諒)
大橋諒