人気のジュエリー、バランス誕生の秘密 TASAKI社長「真珠のタブーは気にしない」
■店舗での「ぜいたく」体験を追求
――TASAKIのフィロソフィーは定着しましたか。 「しつつあります。私がこの会社に入って15年になりますが、創業者が持っていた哲学のエッセンスを、現代に合う形で残し、伝えています。TASAKI時代になって、ようやくここまできたかということです」 ――デジタル時代の到来やコロナを経て、実店舗のあり方はどう変わっていくと見ていますか。商品を見る・買うという場を超越して、これまで以上に「体験」が重要になってくるのではないでしょうか。 「まさにその通りです。私は70歳になりましたが、これまでに大きなパラダイムシフトがいくつかありました。1つは時計です。クオーツ時計の出現で機械式時計が淘汰され、クオーツこそ高級だといわれた時代がありました。けれども今、機械式時計が高級品として再び台頭していますよね。同様のことがレコードとCDでも起きました。アナログ経験しかない分野はデジタルにいったん取って代わられますが、その後アナログは趣味性の高い高級品として需要が回帰するチャンスがあります」 「小売りも同じことが起きるだろうと想像します。私はお店で買うことはアナログだと思っています。デジタルで買うのは確かに便利ですが、その分、わざわざお店に行って、一対一で接客してもらって、時間をかけて買い物をすることをぜいたくに感じるようになるのではないでしょうか。お店のあり方も接客も、今後どうあるべきかを考えねばなりません。店は究極の物の買い方を提供する場所になっていくでしょう」 ――小売りは変革の時期を迎えているのですね。 「銀座店は改装の計画があります。ぜいたくな物の買い方をしてくれるお客様をどういう環境でもてなして、いかに心地よい時間を過ごしてもらうか、を考えています。かつての経験からいえばお店の改装は2年あればできますが、今回はじっくり考えています」 ――没入体験ができるようなお店が出てくるのかもしれません。 「絶対出てくるでしょう。ラグジュアリーはもはや、買う物が高級品だというだけの時代ではない。商品も売り場も接客も、丸ごとラグジュアリーでなければならないのです」 聞き手はTHE NIKKEI MAGAZINE 編集長 松本和佳 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。