フレンチの巨匠・三國清三が教える…誰でも失敗なしの「三國流ハンバーグ」のレシピ公開<最強の時間割>
民放公式テレビ配信サービス・TVer初の完全オリジナル番組「最強の時間割~若者に本気で伝えたい授業~」シーズン2のLesson9が1月12日に放送された。世界を股にかけるフレンチの巨匠・三國清三が講師として登場し、下積みの経験から学んだことや、研鑽に研鑽を重ねた煮込みハンバーグのレシピを伝授した。 【写真】秋元真夏が三國流ハンバーグ作りに挑戦する ■「最強の時間割」とは 「最強の時間割 ~若者に本気で伝えたい授業~」は、さまざまな業界のトップランナーを講師として招き、学生や社会人に「知っておいてよかった」と思える“考え方のヒント”を届ける民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」の完全オリジナル番組。 2022年12月から約半年にわたり、放送された同番組が好評を受けて帰ってきた。シーズン2は11月3日よりスタートし、シーズン1に引き続きラランド・ニシダが副担任役、ラランド・サーヤが生徒役。そして生徒役として元乃木坂46の秋元真夏が参加する。 ■ひたすら鍋磨きだった下積み時代 新年一発目の講義を担当するのは、フレンチの巨匠・三國清三。ひたすら鍋洗いだけを続けた下積み時代を振り返るとともに、絶対に失敗しない三國流ハンバーグの作り方を生徒たちに伝授した。 三國は1988年に世界のトップシェフ60人の一人に選任され、2015年には日本人として初めて仏レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエ受章するなど、"世界のミクニ"と呼ばれて久しい。そんな彼が自らの半生を振り返った自叙伝「三流シェフ」(幻冬舎)は2022年に出版され、9万部のベストセラーとなった。その経歴に似合わぬ腰の低いタイトルや、30代の時の自分と69歳の自分の写真を並べた表紙には「初心を忘れるな」という己への戒めが込められている。 三國は北海道増毛町出身で、漁師の父と農家の母の間に7人兄弟の三男として生まれた。大家族ゆえに贅沢はできず、三國はお米だけのお弁当を周りに隠しながら食べていたという。「飯屋で働けば、飯には困らない」と中学卒業後は、まかない付きの米屋に就職。下宿先で出されたハンバーグが彼の人生を変えることとなる。 あまりの美味しさに感動し、「こんなハンバーグを作りたい」と一念発起。札幌グランドホテルに就職を希望するも、試験を受けるには高卒以上の資格が必要だったため、どうにか厨房に入り込んで「ここで働かせてほしい」と直談判したそうだ。結果、レストランの厨房ではなく、社員食堂で働かせてもらえることに。スパゲッティの存在すらも知らなかった三國の仕事は鍋磨きだった。 料理はいつまで経ってもさせてもらえず、ひたすら鍋を綺麗にし続けた三國。だが、鍋の底までピカピカにして臭いまで落とす三國の丁寧な仕事に先輩たちも感心し、可愛がってくれたという。そこから半年でバイトから社員になり、料理も少しずつさせてもらえるようになったが、次なる修行の地として帝国ホテルを選んだ。そこで三國は人生初の挫折を経験することになる。 ■下積みから料理長に大抜擢!三國シェフが学んだことは? 18歳で上京し、念願だった帝国ホテルに就職した三國。しかし、そこでも洗い場のパートからのスタートで、またもやひたすら鍋磨きをするだけの日々が続く。それでも、三國は札幌グランドホテルでの経験から頑張っていれば、そのうち社員になれると思っていた。だが、3年経ってもその日は訪れず挫折。地元に帰ろうと決意するが、せめて最後に帝国ホテルにあるレストラン18店舗全てを回って鍋磨きをしたところ、なんと料理長の村上信夫に認められ、駐スイス日本大使館の料理長にいきなり任命されたのだ。 三國は料理で評価されたわけじゃないが、村山シェフに下積み仕事の丁寧さと、本来ならばマスターに3年はかかる塩の振り方を認められた。そんな経験から三國は、耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶことが人生には必要であると痛感。また、鍋磨きを続けられたのは先輩たちの喜ぶ顔が見たかったからでもあった。辛い仕事にこそ、自分なりの喜びを見出す。それもまた三國の成功者たる所以だ。 そんな三國は、修行期間なしで店を構える若者が増えていることをどう思っているのか。三國は「3年修行した人の店は3年、5年修行した人の店は5年しか持たないが、10年修行したら力がついて店は20年持つ」と持論を展開。その上で、修行をしなくても店を持つことはできるが、リピーターを得て店を長く続けるためには修行は必要と結論づけた。 弟子に対しては怒らず、優しくしているという三國。一方で、かつて出演したフジテレビ系列のドキュメンタリー「料理の鉄人」ではマスコミウケを狙ってヒール役を演じたことも。超一流シェフたちが料理の腕を競う同番組は人気を博し、グルメブームの火付け役となったが、元々は「三國清三の料理の鉄人」というタイトルで企画されたものだったそう。それもマスコミにウケると思って断ってしまったといい、「ちょっと読み間違えました」と後悔を打ち明けるなど、お茶目な一面を見せた。 ■誰でも失敗なしの「三國流ハンバーグ」のレシピを公開 番組の終盤では、三國が研鑽を重ねて導き出した「三國流ハンバーグ」のレシピを公開!作ってみたい方はぜひ番組を視聴していただきたいが、あいびき肉、玉ねぎ、パン粉、牛乳など基本的な材料は普通のハンバーグと変わらない。少し特殊な材料をあげるとすれば、タネに赤味噌と、ソースにりんごを使用するので、あらかじめ用意しておこう。 まずは玉ねぎを、食感を残したい場合は粗く、残さない場合は細かくみじん切りにしていく。そしてここで1つ目のポイント。通常の作り方では玉ねぎを炒めることが多いが、三國は食感と苦味を残すためにあえて生のままひき肉が入ったボウルに投入する。 次のポイントはパン粉の量。三國流ハンバーグで使うパン粉は20gと通常よりも多い。それは肉汁が外に出ないようにブロックするパン粉を多めに入れることで、ジューシーな仕上がりにするため。少し牛乳に浸したら、他の材料と一緒にボウルへイン!最大のポイントはここに赤味噌を入れること。洋食に和風のテイストを加えた“ジャポニゼ”が三國のスタイルであり、赤味噌を使うことで、コクと甘みがプラスされるそうだ。 タネに使う材料が全てボウルに入ったら、あとは混ぜるだけ。タネが空気を含み、白くなるまで混ぜたらフライパンで焼いていく。最初は強火で、表面をしっかり焼いて肉汁を閉じ込める。この時、フライパンの丸みを利用しながら形を整えると崩れにくいと三國からのワンポイントアドバイスがあった。今回は失敗しにくい煮込みハンバーグのため、中はまだ生でも表面に焼き色がついていたら大丈夫とのこと。続いて、ソースを作っていく。 先ほどまでタネを焼いていたフライパンで、バターとともに炒めるのがりんごだ。三國曰く、一緒に煮込んだ際に出るりんごの甘みと香りが肉にマッチするという。焼き色がついたら、ウスターソース、ケチャップ、デミグラスソースの2種類を入れる。デミグラスソースがなければ、ウスターソースとケチャップの量を増やせばOK。強火でじっくりと煮込むこと約5分。ハンバーグから出てくる白い汁が中まで火が通った証拠だ。 料理好きで“国民の嫁”を自称する秋元も、「自分が作ったとは思えない」と大絶賛。三國が作ったハンバーグを試食したニシダも「うーめっ、やわらけっ」と思わず食レポを忘れる美味しさだった。 最後に、三國は番組恒例の「かっこいい大人とは?」という質問に、「大人の財布を持って青年の心を持つ大人」と回答。そんな三國は2022年末で、37年間オーナーシェフを務めたフランス料理店「オテル・ドゥ・ミクニ」(東京都新宿区)の暖簾を下ろした。現在は新店舗を今年秋にオープンさせるために改装中とのこと。オープン時には70歳になっているため、「80歳まで10年現場に立って、料理をしたい」と衰えぬ向上心を語った。 ■文/苫とり子