中国人から買った家、亭主のいぬ間に住み着いたナゾの侵入者は「ミシリ君」? コトもなげに話す…豪胆な妻のお墨付き
わが家の三階の踊り場の椅子には大分前からマンガなんかに出てくる縞々の囚人服みたいなのを着たネコの人形がいるが、これは妻がハクビシンに挨拶がわりに置いといたそうだ。
もっといろいろなことが起きている可能性がある。
わが家にたくさんちらばっている原稿用紙にいつの間にか、「ハクビシンは見た」なんていう家政夫系短編小説が書かれていても不思議はない。
ハクビシンはジャコウネコ科だという。パソコンの上を走り回って書くであろう「ネコ文」は乱暴だろうが、初の「ネコ系小説」としてたちまち大ヒットしたりするかもしれない。ヤツは家賃滞納であるから、原稿料はこちらの上ハネだが、邪険には扱わないでおこう。どうも屋根裏でこっちを見て笑っているような気がするし。
■椎名誠(しいな・まこと) 1944年東京都生まれ。作家。著書多数。最新刊は、『続 失踪願望。 さらば友よ編』(集英社)、『サヨナラどーだ!の雑魚釣り隊』(小学館)、『机の上の動物園』(産業編集センター)、『おなかがすいたハラペコだ。④月夜にはねるフライパン』(新日本出版社)。公式インターネットミュージアム「椎名誠 旅する文学館」はhttps://www.shiina-tabi-bungakukan.com