『ブギウギ』小雪が朝ドラに初降臨! 気品あふれる気高い姿で趣里の前に立ちはだかる
あの小雪がついに朝ドラの場に初降臨した。放送中の『ブギウギ』(NHK総合)では、趣里が演じるヒロイン・スズ子の前に彼女が立ちはだかることとなる。 【写真】水上恒司インタビュー撮り下ろしカット 本作はいま急展開の連続だ。スズ子と愛助(水上恒司)の関係に胸をときめかせたり、マネージャーであった五木ひろき(村上新悟)が「福来スズ子とその楽団」の資金を持って姿を消したことに落ち込んだりと、私たち視聴者の感情の変化も忙しい。ここに小雪が演じる村山トミは何を持ち込んでくるのだろうか。 この村山トミとは、スズ子が愛する愛助の実の母だ。日本を代表する興行会社・村山興業の社長であり、この大会社の頂点に君臨する存在だ。これまで「梅丸少女歌劇団(USK)」と「梅丸楽劇団(UGD)」を渡り歩いてきたスズ子だが、村山興業はあまりにも巨大である。この組織を率いるトミが、いかに傑物であるかはこのかぎられた情報からだけでも分かるだろう。 そんな彼女が、大切な一人息子である愛助をフリーランスの歌手であるスズ子に奪われそうだというわけで、穏やかでいられないのは当然のこと。時代が時代なだけに、愛助とスズ子の年齢差も引っかかるだろうし、現在のトミの心境は容易に想像できる。初登場シーンでは手紙を介して愛助に優しく語りかけていたものだが、いまの状況からするとずいぶんご立腹の様子。こういった展開から、芸能の世界の現実というものも見えてくる。 かといって、トミは声を荒立てたりなど感情的にスズ子に詰め寄ることはしないだろう。何せ演じているのが小雪なのだ。これまでのかぎられた登場シーンからだけでも、気品あふれる気高い傑物であることが分かる。 第7弾の新キャスト発表時に、制作統括の福岡利武は「スズ子と愛助の大きな壁となる存在として、説得力ある方に演じてもらいたいと思いオファーしました。そして、期待以上に、二人の壁として立ちはだかると同時に、その根底には母の愛情があるというキャラクターをとても繊細に演じていただいています」と述べている。やはりトミは、そんな単純なキャラクターではないようである。そして、それを体現できる人物として小雪に出演の声がかかったのだ。 近年の小雪といえば、かつてと比較すると活動が控えめなように感じるが、出演すれば確実に個々の作品を力作へと発展させる功績を残してきた。面白いのが、2023年のNetflixオリジナル作品として世界的に話題となった『サンクチュアリ -聖域-』と、12年ぶりに主演を務めた映画『桜色の風が咲く』(2022年)での好演ぶりとその振れ幅の大きさだ。 前者は相撲界とその裏側を描いたもので、後者は世界初の盲ろう者の大学教授になった福島智とその母の愛を描いたもの。相撲部屋の女将と、大きな困難に立ち向かう息子を支える母。そう、いずれも母なる存在である。しかし荒々しい男たちの世界に屹立する『サンクチュアリ -聖域-』の花と、大切な息子のために自ら希望の光になる『桜色の風が咲く』の令子は、ほとんど真逆ともいえるキャラクターだ。ただし、どちらも非常に大きな器を持っている人物でもある。豊かなキャリアを持ち、多くの過酷な瞬間を乗り越えてきたのであろう小雪のような俳優にしか演じられないはずだ。このあたりの事実を振り返ると、『ブギウギ』のトミ役のオファーにも納得がいくのだ。 キャスト発表時の公式コメントで小雪は「スズ子にとっては大きな壁となる存在ですが、トミの抱擁力やポジティブなエネルギー、母としての深い愛も表現できればと思っています」と述べている。激動の時代を村山興業のトップとして生きた偉大なる母は、やはり小雪のような存在にしか務まらないのだろう。さて、ここから先にはどんな展開が用意されているのだろうか。
折田侑駿