HKT48堺萌香が卒業 最後に豪快くま投げ 今後は俳優活動、舞台プロデューサーも
HKT48チームHの堺萌香(25)が11日、福岡市中央区地行浜のHKT48劇場で卒業公演に臨んだ。今後は東京の芸能事務所「エンターアーツプロモーション」に所属し、俳優活動だけでなく舞台作品の製作にも携わることを発表。ファンの盛大なコール、仲間の笑顔と涙に背中を押され、人生の新たなステージへ一歩を踏み出した。 ■豪快な「くま投げ」笑いと涙の堺萌香卒業公演【写真】 「行ってきます!」薄紫色のドレスに身を包んだ堺は、仲間がつくるアーチの下を未来へ向かって走り抜けた。「行ってらっしゃい!」ファンの声援が、身長148センチの小さな背中を押した。 2016年の夏に加入した「オイモチャン」。グループでも小柄な方だが、公演の序盤から髪形が乱れるほどエネルギッシュに汗をかく。「ただいま恋愛中」公演では、曲中にクマのぬいぐるみを豪快に投げ飛ばす姿が人気を呼ぶなど、ダイナミックなパフォーマンスでファンを魅了し続けた。メンバーの誕生日を祝う生誕祭では、主役より先に涙するなど情に厚い一面もあった。たゆまず続けた努力が認められ、14thシングル「君とどこかへ行きたい」と15thシングル「ビーサンはなぜなくなるのか?」で表題曲の歌唱メンバーに選ばれた。 アイドルのかたわら、俳優としてもグループの内外で活躍。新型コロナ禍の21年には、HKT48メンバーが制作から出演までを担ったオンライン演劇企画に参加し、豊永阿紀脚本の「不本意アンロック」で主演。「サンクチュアリ」などで知られる脚本・演出家の金沢知樹さんが制作した舞台でも、その演技が高い評価を得ていた。 緊張具合が「手汗」の量で分かるという堺。アイドルとしての最後のステージは、後輩の市村愛里が「過去一だった」明かすほどの緊張とともに始まった。少人数で披露するユニットパートでは、同期の豊永と「炎上路線」をデュエットしたほか、「サボテンとゴールドラッシュ」にも登場。「摩天楼の距離」では盛大な「もえか」コールを浴び、満面の笑みと全力ステップで応えた。 卒業ブロックでは同期の豊永、地頭江音々と3人で「不本意アンロック」の主題歌「カギトナル」を歌唱。約8年間、ともに歩いた2人に支えられ、大粒の涙を流しながら思い出を刻んだ。歌い終えた後には、加入前から好きだった1期生の植木南央がサプライズで登場。驚きながら「かわいい!」と〝心の声〟をもらしてファンとしての一面をのぞかせたほか、「植木さんと選抜に入りたかった」と唯一の〝心残り〟を明かし、東京から自腹で駆けつけたという大先輩を感涙させた。 自分の好きなグループが変わりゆくことが納得できず、「それなら自分も加入してしまおう」と飛び込んだ世界。理想と現実の差に戸惑い「最初の4年は見てもらえているという実感がなかった」。何度も卒業を考えながら、応援してくれるファンを置き去りにすることができずに思いとどまった。苦しいときも支えてくれた「いもだち」に感謝を伝え「『それだったらHKTにいた方が良かったじゃないか』と絶対に思って欲しくない。送り出して良かったと思ってもらえるように、いろんな活躍の場を見せられるように頑張っていきたい」と、力強く宣言した。 25歳は「アイドルとしては若くない」としながら「(人間としては)まだ若いのでたくさん経験できる」とした今後の道。「8割不安」と胸の内を明かしながら、7月に上演される「劇団TEAM-ODAC」の舞台「ダルマ」に出演すること、その後はドラマ「HERO」や「ドラゴン桜」などを手がけた、秦建日子さん脚本の作品に、プロデューサーとして携わることも報告した。 アイドルとして最後の曲に選んだのは、思い出深い「くまのぬいぐるみ」。最後も豪快な〝投くま〟で、ファンの期待に応えた。笑顔と涙が交互に訪れ、卒業生も数多く見守ったラストステージ。「8年間の締めくくりがしっかりできました!ありがとうございます!」。晴れやかな笑顔で手を振った。「小さな巨人」の巣立ちをたたえるように、主役の去った劇場には「もえか」コールが響き続けた。
西日本新聞社