景気回復期に、従業員が解雇される5つの理由
■自分には何がコントロールできるか インフレ率が低下し、低失業率の状態が続くなど、景気回復の兆しがあるにもかかわらず、2024年は年明けからすでにレイオフが急増し、本稿執筆時点(2024年1月)でテック業界だけでその数は1万人を超えている。ほかにも、メイシーズ、ウェイフェア、フォード・モーター、シティグループなどが2024年に入ってレイオフを発表した。このため、多くの労働者は、次に解雇されるのは自分ではないかという不安な状況に置かれている。 このような状態では、みずからを無力に感じるのも当然だ。会社の目標が変更されて自分の仕事との間に関係がなくなるとともに、事業部全体が閉鎖されることや、会社が過剰雇用を行って予想外に収益が減少した場合に、あなたにできることはあまりない。しかし、ストレスに対処するために積極的に行える対策はある。本稿では、レイオフが行われる一般的な5つの理由と、仕事上の運命を自分でコントロールするための戦略を紹介する。 ■1. スキルアップの欠如 アップスキリング(スキルの向上)とリスキリングは、100%従業員の責任だ。企業は新しいスキルを学ぶためのリソースを提供することはあっても、全従業員を対象とする内容である傾向が強い。そのため、ほとんどの人材開発プログラムは、フィードバックの与え方などのマネジメントスキルや、権限に基づかない影響力などのリーダーシップスキル、感情的知性(EI)などのソフトスキルに重点を置いている。しかし従業員は、AIアプリケーションや新しいプログラミング言語に関して技術的に習熟するなど、ハードスキルを向上させ続ける必要がある。急速に変化するビジネスニーズに対応するためにスキルを進化させ続けない人は、レイオフの対象になるかもしれない。 チャットGPTのような生成AI(人工知能)や大規模言語モデル(LLM)の最近の進歩は、タイムリーにその例を示している。これらのテクノロジーは、大規模で人間の労働者に取って代わると予測されているが、いまのところ、取って代わるのはAIのスキルを持たないテック系労働者かもしれない。企業がこの新しいテクノロジーで主力製品をアップデートする際には、LLMの専門知識を持つ人材を求めるだろう。 たとえあなたが自然言語処理、機械学習、自然言語理解の専門家であっても、文脈に沿った正確なテキストを生成し、クエリに答え、テキストを要約し、言語翻訳を行うことができるLLMの専門知識がなければ、あなたのスキルはすでに時代遅れだ。 新しい領域でリスキリングに専念し、新たなビジネス手法への移行中にそのスキルを発揮すれば、あなたの仕事は守られるかもしれない。したがって、従業員は自分のスキルが適切なものであり続けるよう、市場や会社の方向性に基づいてスキルや知識を得るための積極的なアプローチを取るべきである。 ■2. 「実行者」ではなく「監督者」になっている 企業が予算削減を決定すると、財務部門は通常、各部門に特定の削減率を割り当てる。その削減率を達成するための最も簡単な方法は、特に仕事の達成に積極的に関わっていない、給与の高い人物のポジションをなくすことだ。実務に携わっていないマネジャーは、タスクやプロジェクトの遂行に直接貢献していないと認識されるため、組織にとっての価値が低いと見なされる可能性がある。こうした認識により、コスト削減の際に不要と考えられやすい。 組織にとってかけがえのない存在のマネジャーは、チームをマイクロマネジメントすることなく、戦略的リーダーシップと実務への関与のバランスをうまく取っている。彼らは適応力があり、変化に素早く対応できるため、不安定なビジネス状況においてレジリエントであると認識される。チームダイナミクス、課題、目標を深く理解し、細部まで語る能力を発揮できるマネジャーは、チームをまとめる接着剤のような存在と見られ、その役割が不要だとは思われにくくなる。